来日記念 公開シンポジウム「How to Be Human」参加レポート

『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(How to Be Human)の著者、ジョリー・フレミング氏が来日。立教大学で公開シンポジウムが行われました。
黒坂真由子 2026.10.23
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 このシンポジウムに先立つ10月10日、横浜にてフレミング氏がインタビューに答えてくださいました。インタビューは、「黒坂真由子の発達障害レポート」で配信されます。登録済みの皆様は、公開まで楽しみにお待ちください。まだの方は、この機会に読者登録をぜひ。概要はこちらです。

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 『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(How to Be Human)の著者、ジョリー・フレミング(Jory Fleming)氏が来日。2026年10月12日の祝日に、立教大学でシンポジウムが行われました。対面とオンラインのハイブリッド形式で、デイビッド・セイン氏の日英逐次通訳がつきました。対談相手は、このレターにも登場してくださった上杉隼人(金子靖)氏です。

ジョリー・フレミング氏。立教大学にて。

ジョリー・フレミング氏。立教大学にて。

 シンポジウムのタイトルは「自閉スペクトラム症、ニューロダイバーシティ、文化を越えるコミュニケーション」。フレミング氏と書籍の翻訳を担当した上杉氏が対談を行いました。

 私はこれまで、『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』を機会があるごとに紹介しています。それは、フレミング氏の世界の見方、捉え方が、いわゆる「普通」の人が見ている世界とは違うように感じられるからです。そしてその世界の見方は、とても優しくあたたかいものです。この本の副題に「自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方」、原題では「An Autistic Man's Guide To Life」とあるように、まるでフレミング氏に案内されるかのように、私たちはこの世界の新たな側面を知ることができるのです。

 フレミング氏は1994年生まれ。自閉症を含めて複数の障害があります。ホームスクーリングで学ぶ楽しさに目覚め、2013年にサウスカロライナ大学に進学。英国オックスフォード大学のローズ奨学金を得て、オックスフォード大学の大学院へ。2019年9月に修了し、現在は地理学と海洋地形学の研究者として、母校のサウスカロライナ大学で働いています。また、学生時代から教育ボランティアに力を入れています。

 対談相手となる翻訳者の上杉隼人(金子靖)氏は、立教大学兼任講師を務めています。翻訳書の内容は多岐にわたりますが、ライフワークとして続けているのが、自閉スペクトラム症や当事者とその家族を支える活動です。自閉スペクトラム症・ニューロダイバーシティに関わる翻訳もその一環で、フレミング氏の著書の他には、ヴィクトリア・ロイド=バーロウ『鳥の心臓の夏』(朝日新聞出版)があります。

 日本語を勉強しているというフレミング氏。まずは、日本語の挨拶で会はスタートしました。質疑応答にも、日本語を挟みながら答えてくれました。

 当日は、フレミング氏の英語、上杉氏の日本語の順で、朗読が行われました。本の中から厳選された朗読箇所を、許可を得て一部ご紹介します。

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朗読

You think, I’m not in a state of health because I have this illness. But with autism, this is just my state. There is no other state and there is no future possibility of a different state, so there’s nothing more to think about. I certainly wouldn’t want to wear a scarlet letter for autism so that everybody knows I have autism when I speak with them.

僕は自閉症だから、健康状態がよくないとみんな思うかもしれない。でも、自閉症は僕の通常の状態なんです。今と違う状態はないし、今と違う状態に将来なることもない。だから、これ以上考えても仕方ないんです。自閉症(Autism)の緋文字Aを付けて、話す相手すべてに僕は自閉症ですと知らせるようなことはしたくない。

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I know the value of education from experience, and I recognize that between therapy and Mom homeschooling me, I had a lot of very active interventions in terms of educational assistance in that regard. On one level, my transition from nearly nonverbal to, you know, whatever this is, being over here studying on a Rhodes Scholarship, was not like me just flipping a switch in a room by myself in the dark. It was very much of a constructed experience, and I was not the one constructing it. In some cases, I was being helped along on the journey by Mom and many others.

これまで生きてきて、教育が重要であるとわかっています。セラピーを受けていた時から母のホームスクーリングを受け始めるまでにも、教育支援という形で、非常に熱心な教育指導を何度も受けさせてもらいました。ほとんど言葉がしゃべれない状態から、いろんなことを経験して、ローズ奨学金をもらってここオックスフォード大学で研究できるまでに至ったわけですけど、暗闇で僕がひとりでスイッチを入れたからできた、というようなものでは決してありません。すごく充実した経験の積み重ねのおかげだけれど、僕ひとりで積み上げたわけじゃない。僕は人生の旅路において、母をはじめ、多くの人たちに支えてもらっています。

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I feel like autism is on a spectrum for a reason. In my mind at least, there’s a wide variety of types and levels of impact on people with it. I’ve been asked questions like “What do you think about being a role model for autism?” One, I don’t think role models are always a good idea, because everybody is unique, and everybody can be their own leader. Two, each person on the spectrum is different. Not every autistic person is going to excel academically, just like not every person is going to excel academically. It’s in no way a negative statement; it’s just a recognition of the huge variety of types and levels of impact. Different people excel at different things. It adds another layer of reasons why you shouldn’t make generalizations.

自閉症には幅みたいなものがあると思います。少なくとも僕の頭の中では、自閉症の人たちの症状はさまざまだし、定型発達者が自閉症から受ける印象もさまざま。よく「自閉症を克服したお手本のような人であることを、どう考えている?」みたいなことは聞かれます。ひとつ言えるのは、この「人がお手本と考える」というのは必ずしも好ましいことではありません。誰もが独自のものを備えているから、誰もがそれぞれのリーダーになれるのです。もうひとつ、自閉スペクトラム症は人によって異なるということです。定型発達者がみんな学業ですごい業績を残せるわけではないのと同じで、自閉症の人がみんな学業ですぐれた業績を残せるわけじゃない。これは決して否定的な言い方じゃないと思う。いろんなタイプの人がいて、周りに与える影響もさまざまだってことだから。それぞれがそれぞれのことに抜きん出ている。これもまた、人を一般化できない理由のひとつだと思います。

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LW(*): What do you think about the concept of someone wanting to “fix” or edit out autism?

リリック:誰かが自閉症を「矯正」したり、取り除こうとしたりするのをどう思う?

JORY: This discussion is also part of a broad, moral thought that doesn’t necessarily apply just to autism. Potentially in ten, twenty years, it could apply to a whole bunch of different things. With gene editing, for example, my concern is that we will ask first, but think later. Not practical thinking, but moral thinking or ethical thinking. Those elements are usually slower than technology. It takes time for philosophy to catch up with technological advancements. My concern is that with biological editing, we change something before we understand what consequences would be bad. Not just trying to edit out autism, but all sorts of other things also.

ジョリー:この議論は広く道徳的なことも考えることになるから、自閉症だけの問題にとどまらないんじゃないかな。おそらくこれから十年、二十年で、さまざまなことにあてはめられると思う。僕が心配しているのは、たとえば遺伝子操作(ゲノム編集)などでも、みんな最初にどうすれば実現できるか知りたがるけど、この技術がもたらす意味や影響を考えるのは後回しになってしまう。まずは実用化が考えられて、道徳的、倫理的な判断はそのあと。道徳的、倫理的な判断の進展は、いつもテクノロジーの進歩を見てからということになる。どうすべきかという哲学的判断は、常にテクノロジーの進歩より遅れてしまう。だから僕は心配です。遺伝子操作によってどんな悪いことがもたらされるか突き止められる前に、僕らは何かを変えてしまうかもしれない。自閉症を取り除くだけじゃなく、悪いと思われるものはみんな取り除かれてしまうかも。

*)LW:リリック・ウィニック。本の共著者

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続きは、4682文字あります。
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