『「勉強ができない」には理由があった』 「はじめに」公開
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本を書くとき、「はじめに」は一番最後に書きます(たぶん、そういう人は多いはずです)。
「はじめに」は、本の紹介のための文章だからです。その本に何が書いてあり、何を伝えたいのかを、ぎゅっと凝縮したのが「はじめに」です。出版社に勤めていた編集者時代も、「はじめに」に力を入れるように、先輩方から指導されました。読者が最初に読むのが「はじめに」で、その出来によって、その人が本をレジに持っていってくれるかが決まるからです。
今回、出版社の許可を経て、ここに「はじめに」を全文掲載します。この本がどんな本なのかが、端的にわかるはずです。
はじめに 「勉強ができない」には、理由がある
「勉強ができない」を Quest(探究)する。
それが「Quest」するシリーズ、「Qブックス」に収められた本書の目的です。
勉強ができないことに、理由なんてない。そう思っている人は多いはずです。しかし、そんなことはありません。理由はいくつもあって、この本で収まりきるか心配なくらいです。理由は一つのこともありますし、いくつか重なっている場合もあります。
このテーマで私が本を書くことにしたのは、私自身、「息子は勉強ができない」と思い込んでいたからです。小学生の頃の息子は、目の前にある漢字のお手本を写すことができませんでした。漢字を書こうとすると、線が多いか、少ないか、横に書くべき線が縦になるかなどしていました。私は横で宿題をする息子を見ながら、「なぜ、書けないのか?」ということをずっと考えていました。
「勉強ができない」息子でしたが、将棋はすぐに覚えて、あっという間に私より強くなりました。将棋の上達は、びっくりするくらい早いものでした。
文字がうまく書けない息子と、将棋の強い息子。この二つをつなぐものは何なのか。「勉強はできない」けれど、将棋はできる理由はどこにあるのか。その答えを求めて、取材を始めることになりました。9年ほど前のことです。
この本を書くことができたのは、9年前のこの素朴な問いへの探究が、最初のステージをクリアしたからです。そうです、「勉強ができない」には、ちゃんと理由があったのです。
専門家の話、たくさんの研究、積み重なる本を読み、息子と一緒に学ぶうえでわかった「勉強ができない理由」は、誰にでも当てはまる一つの回答ではありませんでした。しかし「勉強ができない」ということはどういうことなのかを、教えてくれました。そして「勉強ができない」には、脳の話や環境の話を含め、たくさんの理由があることも教えてくれました。
「勉強ができない」には、どんな理由があるのか。
Questしてみたいと思った方は、次のページへ進んでください。「勉強ができない」に対する探究の旅を、一緒に始めましょう。
2026年9月 黒坂真由子
●学びと自分の探究
学校で感じる苦手を糸口に、本書はスタートします。
教室には、がんばっているのに成果が出ない子や、目に見えない困りごとを抱えている子がいます。時に、その困りごとには「発達障害」や「学習障害」という名前がつくこともありますが、そうでなくても、「勉強ができない」という悩みを抱えている子はいます。得意なことがあっても、それだけで評価されることがない学校という社会で、「勉強ができない」と悩んでいる子は少なくありません。
でも、「勉強ができない」とは、どういうことなのでしょうか?
今、「勉強ができない」とされている人は、本当に勉強ができないのでしょうか?
人には、さまざまな思考パターンがあることがわかっています。例えば、「視覚思考者(ビジュアル・シンカー)」と呼ばれる人は、画像や映像を使って物事を考えています。このような人は、現代社会で有利なように思われますが、学校の授業やテストは、ビジュアル・シンカー向きにはつくられてはいません。知能テストも同じです。
もしかするとビジュアル・シンカーの子どもは、学校では「勉強ができない」と思われているかもしれないのです。
学習障害を持つ子も同じです。
読めない、書けないということが、学校生活においてはかなりの重荷になってしまうからです。学習障害は「目ではなく、脳」の話であることは、まだまだ知られていませんし、どのように対応したらいいのか知る人も多くありません。いわゆる「算数障害」も同じです。適切なサポートが必要な算数障害の子が、「算数が苦手な子」とみなされている可能性があるのです。
「勉強ができない」と誤解されるだけでもつらいものですが、こういった子どもたちはともすると、「怠け者」というレッテルをはられてしまうことがあります。なぜなら、「ちゃんと書かない」「ちゃんと読まない」「ちゃんと宿題をしない」と思われてしまうからです。
●自分を知り、自分に合う方法をみつける
自分の「勉強ができない」理由がわかれば、自分に合った方法を探すことができます。
デジタル機器を使って学ぶこともそうですし、学びやすい環境を整えるのも方法の一つです。環境調整の一つには、特別支援教育を受けることや、合理的配慮を得ることがあります。例えば、共通テストの「合理的配慮」はとても進んでいて、実は下記のような態勢での受験が認められています。

『「勉強ができない」には理由があった−− 学習障害って何だろう?』より
「勉強ができない」と言われている人は、本当にそうなのか? 一度考えてみる必要があると私は思います。学びを支える特色のある学校は増えていますし、「年内入試」など入試方法も多様化しています。
自分自身の「できない」を探究することで、この先の道筋が見えてくるはずです。
「勉強ができない」には、理由があります。その理由を、この本をきっかけに探してみてください。
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