高専って、どんな学校? 高山清茂×黒坂真由子 保護者対談 第1回
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中学卒業後の進路として注目したいのが、高等専門学校(以下、高専)です。
高専は工学分野や情報分野に強い興味や関心がある子どもにとって、魅力的な選択肢です。5年間の一貫教育で、工業系や情報系、ものづくり系の専門的な知識と技術を学びます。
国立が全国に51校あり、公立は東京、大阪、神戸に3校、また4校の私立高専があります(2026年6月現在)。国立高専には全国から学生が集まります。学生寮で寮生活を送る学生もいます。
授業は、実験や実習が多いのが特徴です。専門的な知識と技術を早くから学ぶことができます。主な学科は、機械・材料系、電気・電子系、情報系、化学・生物系、建設・建築系などです。
ゼミ活動も盛んで、全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)、全国高等専門学校プログラミングコンテスト(高専プロコン)が有名です。高専ロボコン、高専プロコンは、高専生の「甲子園」のようなものといえるでしょう。
また、AIとものづくりを掛け合わせた「ディープラーニングコンテスト(DCON)」で、新たなビジネスを作り出すことにチャレンジしている学生もいます。
卒業後は、就職する学生が6割ほど、4割近くが進学します。卒業生に対する求人倍率は非常に高く、就職率は例年99%前後です。
『発達障害大全』の執筆の際、進路の候補の一つとして高専を入れました。何かに夢中になる子どもにとって、高専は検討したい進学先のひとつだからです。我が家の長女がたまたま高専に通っていたことから、高専がどのような学校かというのを内側から観察できた、という理由もあります。
また、ディスレクシアなど読み書きに困難がある学生にとって、当たり前にタブレットやパソコンで授業を受けている高専のような学校は、読み書きに関するストレスが大幅に軽減されます。手で何かをつくることが好きという場合、授業そのものを楽しむことができるはずです。
高専に対して「就職する学生が多い」というイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし現在では、約4割が進学しています。一番多い進学先は、高専生の受け入れ先として創設された豊橋技術科学大学(豊橋技科大)と長岡技術科学大学(長岡技科大)。その他の進学先は全国の国立大学の3年次への編入(東京大学など一部の大学は2年次編入)や、高専に接続した「専攻科」です。もし、同じ高専の専攻科に進んだ場合は、7年間の学校生活となります。その後大学院に進学する学生もいます。
発達障害がある子どもにとっても(そしてない子どもにとっても)、手を動かすのが好きな子であれば、有望な選択肢となる高専について、親子ともに高専出身である建築士の高山清茂さんにお話を伺いました。高山さんは豊田高専の建築学科、息子さんは東京高専(東京工業高等専門学校)の機械科を卒業され、豊橋技科大へ進学しています。
高山さんが東京高専の保護者向けに行ったプレゼンをもとに、いろいろとお話を伺いました。高山さんと筆者の黒坂は、子どもが同じ高専の同じ学科(東京高専、機械工学科)、ロボコンゼミの保護者だったということもあり、この記事は高専について保護者が語るという対談形式をとりました。
「高専はどんな学校か」「高専を卒業した先の進路は」「高専でのロボコンゼミの活動」など、保護者目線から思うところをいろいろと語った内容となっています。知られざる高専について、プラス面、マイナス面を含めてざっくばらんに語っています。
●高専って、どんな学校?
黒坂:私自身、地元の埼玉県に高専がなかったので、娘の受験までその存在を知りませんでした。国立高専は全国に51あるのですが、埼玉県・神奈川県・山梨県・滋賀県・佐賀県にはないんですよね。
高山:そうですね。私が入学した時よりは知られるようになってきましたが、今でもあまり知られていないと思います。一方で、親子やきょうだいで通っている方は我が家に限らず多いと感じるので、通うと勧めたくなる学校なのかもしれません。
黒坂:全国から学生が集まっていて、寮生活をしている学生が多いことも新鮮でした。高校1年生から親元を離れることになるので、子どもの自立が早いと感じました。
高山:息子も入学時に学生寮に入り、1年生から一人暮らしをしました。親元を離れるのは、早くなるかもしれないですね。
黒坂:娘は3年生の秋から、ロボコンゼミと勉強が忙しくなり、学外の寮で一人暮らしを始めました。思ったよりも早く、家を出たなと感じたものです。
娘が入学して最初の感想は、「大学みたいだな」というものでした。制服もないし、それこそメイクもアクセサリーも問題ない。高校とはずいぶん違いますよね。
高山:そうですね。「生徒」ではなく、「学生」と呼ばれたり、早くから学科に分かれるのも、大学っぽいですよね。東京高専は、1年生だけはクラスで分かれますが、2年生から「機械工学科」「情報工学科」「電子工学科」「電気工学科」「物質工学科」に分かれます。例えば機械工学科では、「ものづくり工学」「メカトロニクス」「材料力学」「機械設計法」などが専門科目の必修となっています。早くから専門的な学びができるので、興味がある子は勉強自体が楽しいと思います。
黒坂:だからこそ、偏差値だけで選ぶと苦労するとも聞きます。興味がなければ、5年間も工学系の勉強だけを続けるのは厳しいと思います。1年生から、科が分かれる高専もあるといいますから。
高山:こういった勉強が苦にならない子が集まっていますからね。東京高専では2年生以降の4年間は、クラス替えもありませんし。
黒坂:そうですね。機械科は女子が少なかったので、「物質工学科は女子が多くていいな」と言っていました。物質工学は、化粧品づくりにつながる工学なので、女子の人気が高いようです。
高山:2023年に徳島県に開校した私立の「神山まるごと高専(神山高専)」は、全寮制で学科も「デザイン・エンジニアリング学科」の一つだけなんですよ。起業家の育成を目指すなど、従来の高専の枠を超えた新しい学校だと思います。
僕のように、最初から建築をやりたいとわかっている場合は、学科が早く分かれるのはいいのですが、それはすなわち進路が早い段階で決まってしまうことにもなります。ですから、神山高専のように、学科が分かれないというのもいい面があると思います。
黒坂:確かに受験前の説明会に参加したとき、先生から「理系の学校ですが、医師にはなれません」というアナウンスがありました。医療ロボットへの道はあっても、お医者さんにはなれない。大学へ編入するとしても、編入先は基本的に工学部になりますから。
高山:高校受験の段階、つまり中学3年生で「進学する場合は工学部」と決めることになります。そこは人によってはマイナス面かもしれません。
黒坂:3年で高校卒業資格を取得して、他の大学を受験する学生もいますよね。「入ってみたら違った」ということになる学生もいるのだと思います。
高山:そうですね。休学した後、高校資格を取って、芸術系の大学に進学した人もいたそうです。大学に入ってからではなく、早めにやり直すことができ、その後の進路もしっかり決まることになり、良い面もあるかと思います。
●過保護でない学校
黒坂:驚いたのは、留年がわりとある、ということです。そのあたりも普通の高校より、大学っぽいと思いました。高山さんが通われていた頃から、留年はありましたか?
高山:留年する人は当時からいましたね。先生たちからも留年するぞと常に脅されていました。
黒坂:そこはちょっと気をつけなければいけないところですね。
高山:その点は仕方ないかな、と思います。高専側としては、一通りの知識と技術のある学生を卒業させなければいけないと考えているのだと思います。そういう責任を負っているのかな、と。
高校と比べると高専の方が、学生に対する「製造者責任」というか、「ここまで学んだ学生です」というふうに、学校として仕上げていく、みたいな感じがあります。高校の場合、「うちの学生はこういう学生です」というのではなく、大学に受かるかどうかという部分が重要になります。高専はそもそも、就職のために設立された学校ですから、「こういう学生を育てました」と、学校として示す部分があるような気がします。