発達障害を診る小児科医がいなくなる? 「診療報酬改定」直前の救済措置 辰巳孝太郎衆議院議員インタビュー(第1回)

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●プロフィール
辰巳孝太郎(たつみ こうたろう)
日本共産党衆議院議員。1976年生まれ。米エマーソン大学映画学科卒。衆議院議員(2期目)参議院議員(1期)。党衆議院国対副委員長。衆議院厚生労働委員、予算委員、復興・原子力特別委員。8000件の生活相談に応じてきた経験から反貧困をモットーに活動。

日本共産党衆議院議員の辰巳孝太郎さん
5月13日、辰巳孝太郎さんは今回の「診療報酬改定」の問題点を衆議院厚生労働委員会で指摘。質疑を通じて、改善を迫りました。厚生労働省(厚労省)は5月29日に一部を改定。当初懸念されていた、発達障害を診療する小児精神科医・児童精神科医に対する大幅な診療報酬の引き下げは、直前に見送られました。
●診療報酬改定とは?
−− 「このままだと発達障害を診てくれる小児科医がいなくなる」という情報を、「発達障害当事者協会」などの発信を通じて、5月に入ってから目にするようになりました。「診療報酬改定」は、ざっくりとした言い方をすれば、病院や薬局などが提供する医療サービスに対する公的な価格(点数)を見直すことですが、それが発達障害の診療に関わってくるということを、恥ずかしながら最近まで知りませんでした。
辰巳さんは5月13日に衆議院厚生労働委員会でこの問題を指摘され、5月29日には、「救済策」が付け加えられたわけですが、この間、実際に何が起こっていたのかを教えていただけますか。
辰巳孝太郎(以下、辰巳):私も気づいたのはそれほど早くなくて、今年の4月なんです。中東問題によるナフサ不足によって、医療関係者の間で手袋など足りないものが出ているので、その聞き取りに兵庫県保険医協会へ行ったんですね。その協会が、医療物資の不足についてのアンケートを会員の皆さんにとっていたのですが、その時に、診療報酬改定に関するアンケートも同時にしていたのです。「これまでの診療報酬から、4割を減額される医師が出ることになるから」ということでした。
このことを早くから知っていたのは、こういった保険医協会の方々など、少数だったと思います。おそらくお医者さんもあまり気づいていなかった。なぜかというと、対象になる医師が限られているからです。
−− 今回の診療報酬改定がどのようなものだったのかを、まずは教えていただけますか。
辰巳:ざっくり言えば、「発達外来」「児童精神科」「小児精神科」などの看板を掲げている医師の中で、「精神保健指定医(指定医)」という資格を持っていない医師が、「通院・在宅精神診療」を行なった場合、その点数が4割下がる、というものです。この点数が従来の550点から、330点にされてしまうんですね。これはつまり、該当する医師の収入が、4割カットになるということです。
−− 「通院・在宅精神診療」というのは、精神科や心療内科への通院や訪問による診療のことですね。発達障害で入院治療はないと考えると、発達障害の診療はこの「通院・在宅精神診療」にあたります。該当するのは「指定医」の資格を持っていない医師ということですが、そもそもこの資格はどのようなものなのでしょうか?
辰巳:「指定医」は、精神科医の国家資格で、強制入院や行動制限などの判断をすることができるものです。精神科の先生だと、持っている人が多いですね。ただ発達障害の場合、特に子どもであれば、小児科の先生が担当することも多いわけです。
−− 確かにそうですね。まずはかかりつけの小児科に行く、という方も多いと思います。
辰巳:僕は大阪出身なのですが、大阪府で発達障害を診断できる登録医療機関は84あるんですね。その中で小児科を掲げている機関は34もあります。小児科のお医者さんは、この「指定医」をもっていないと考えられるわけです。
−− 精神科ではなく、小児科のお医者さんだからですね。
辰巳:今回の改定は、地域で頑張っている小児科の先生に打撃を与えるものになっていました。なぜなら地方では、かかりつけの小児科の先生が、発達障害を担当することが少なくないからです。
4割って大きいですよ。小児科で発達障害を診ていた先生にしてみたら、それでは経営が成り立たない、ということになります。「発達障害の診療から撤退しようか」という話になってくるわけです。
−− それが「診療報酬の改定で、発達障害を診る小児科がいなくなる」という話なのですね。確かに4割も収入が減ったら、やっていけないと思います。
辰巳:そうなんです。怒ってもいいぐらいの話なんですよ。ただ、当初はそれほど大きな声にならなかったわけです。
−− だから、情報が表に出てくるまでに時間がかかったのですね。
辰巳:私の知り合いの先生は、自分のクリニックを半年くらい人に預けて、大学病院に戻って「指定医」の資格を取る、と言っていました。
−− でも、この資格を取るのは、それほど簡単ではないですよね。医師としての5年以上の経験と、そのうち3年以上は精神科で勤務、レポートの提出もしなくてはいけない、とか(*)。
辰巳:その先生はたまたま、大学病院に戻れたからいいのですが、おそらくほとんどの先生は、「指定医」を新たに取る条件下にないと思うんですよね。小児科の先生は、特にそうだと思います。
−− 小児科の先生の中には、「子どものこころ専門医」など、学会が認定する専門医資格で活動している方もいると思います。そういった子どもの精神医療に関わる資格は、今回考慮されなかったのですね。
辰巳:ですから現場の先生方にとっても、納得できない話だと思います。
−− この「診療報酬改定」は、そもそもどのくらいのサイクルで行われるのですか?
辰巳:2年ごとです。
−− では2年後にも注意が必要、ということですね。
*)5年以上の診断・治療経験、3年以上の精神障害の診断・治療経験と一定の症例経験を有し、必要な研修を修了した医師のうち、指定医の職務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認められる者を厚生労働大臣が指定する。(精神保健指定医の新規申請について 令和7年度精神保健指定医研修会)
●改定の本当の狙い
−− でも、なぜ厚労省は小児科医の診療報酬を減らそうとしたのでしょうか。というのも厚労省は、発達障害の初診にかかる時間の短縮を目指しているからです。医師の養成や地域でのネットワークづくりなど、積極的に取り組んでいるように思えたのですが。今回の改定は、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような気がしてしまうんですよね。
辰巳:この改定の本当の狙いは、「精神科のコンビニクリニック」なんですよ。診察をほとんどせずに、薬だけぽんぽん出すような病院に、一定の歯止めをかけたいという狙いがあるんですね。

衆議院第二議員会館にて
−− となると、そもそも発達障害を診ている小児科の先生を狙ったものではなかった、ということですか?
辰巳:そうだと思います。厚労省をはじめ、いろいろな方に話を聞いたのですが、中には「児童の発達障害を診ている医師のほとんどが『指定医』の資格を持っているだろう」と考えている人がいました。ただ実際には、発達障害を診る児童精神科などの先生は、精神科からくる先生だけでなく、小児科からくる先生もいます。ですから専門性が高くても、小児科医の場合「指定医」の資格を持っていないことは当たり前にあるわけです。
−− 「指定医」の資格があると思われていた、というのが理由のひとつ。
辰巳:もうひとつの理由は、「小児特定疾患カウンセリング料」という別の点数で、小児科医の減額をカバーできると考えていたということです。でも、これも完全なものではないので、当初の案では小児科の先生に対する4割減はカバーできないままでした。
−− なんというか、うっかりしていた感じなんですかね。「みんな指定医の資格をもっている」とか、「特定カウンセリング料でなんとかなる」と考えていたけど、蓋を開けてみたら、そうではなかった。
辰巳:だからこそ、これだけ大きな騒ぎになり、6月1日施行日直前の5月29日に、「救済措置」が発表されたわけです。
●「救済措置」は、どのようなものか
−− 「救済措置」はどのようなものですか? 「かかりつけの小児科」は、救われるものですか?
辰巳:まず「指定医」でなければ4割減算、というルールはそのままです。その上での「救済措置」となります。発達障害の診療も多い「療育センター」などの病院や、子どもの精神科に特化した医療機関などで「20歳未満」の子どもを診る場合は、4割減の対象外になりました。「20歳未満」から継続的に診療を行なっている場合も同様です。
また、この「救済措置」の中にも含まれない小児科などの場合は、「小児特定疾患カウンセリング料」を加算することで、それほど遜色がない水準までカバーできる、ということになっています。
−− ということは、例えば子どもが通っている小児科のお医者さんが困る可能性はなくなったわけですか。
辰巳:そうですね。当面の間、子どももしくは子どもの頃から通院している方であれば、ほっと一息ついていただくことができたわけです。
ただ、この「20歳未満」という部分、そして「小児特定疾患カウンセリング料」の扱いに、まだ問題が残っているんです。
(取材日:2026年6月10日/撮影:黒坂真由子)
*参考
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