求められる「小児特定疾患カウンセリング料」の期間延長 辰巳孝太郎衆議院議員インタビュー(第2回)

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●プロフィール
辰巳孝太郎(たつみ こうたろう)
日本共産党衆議院議員。1976年生まれ。米エマーソン大学映画学科卒。衆議院議員(2期目)参議院議員(1期)。党衆議院国対副委員長。衆議院厚生労働委員、予算委員、復興・原子力特別委員。8000件の生活相談に応じてきた経験から反貧困をモットーに活動。

日本共産党衆議院議員の辰巳孝太郎さん
令和8年度6月から実施された「診療報酬改定」。その内容が知れ渡ると、現場の医師、当事者団体などから次々と声が上がりました。直前に「救済措置」が示されたものの、「小児特定疾患カウンセリング料」が4年しか利用できないなど、まだ問題は残っています。さらに「就労継続支援B型」の報酬引き下げの問題についてもお話を伺いました。
●いまだ残る2つの問題
辰巳孝太郎(以下、辰巳):「20歳以上」の人が新たに受診する場合、問題になります。第1回目のインタビューで詳しくお話ししましたが、「精神保健指定医(指定医)」の資格を持っていない医師が、「通院・在宅精神診療」を行なった場合、その点数は4割下がります。「20歳未満」から継続して診ていた場合は問題ないのですが。
−− となると、「指定医」を持っていない医師が、21歳の大学生を初診でみはじめたら、4割減になるということですか?
辰巳:そうです。事実上採算が取れなくなるので、別の病院を紹介することになると思います。
−− 働きだしてから通院するようになる発達障害の人もいます。そういう場合に、診てくれるお医者さんが見つかりにくい可能性があるのですね。
辰巳:さらに、問題が持ち越された形になったのは「小児特定疾患カウンセリング料」の扱いについてです。これはね、4年しか使えないんですよ。今後この年数を伸ばさなければ、同じ問題が起きることになります。
−− この「4年」という期間の短さを心配している人は多いですね。発達障害の診療というのは、その子の成長を追っていく部分があるので、4年はやはり短すぎると思います。5歳で診断がついて、9歳までというわけにはいきませんから。
辰巳:厚生労働省(厚労省)も、この問題は認識しています。実際に最初は2年だったものが、今は4年に伸ばしたことも、その表れだと思います。
−− 4年後に減額されるとなったら、新たに発達障害を診ようという小児科医は現れないでしょうし、現在診ているお医者さんも、この先どうするかを考えてしまうかもしれません。厚労省には、早めにこの4年という期間の延長を決めていただきたいです。
●基準に対する疑問
辰巳:僕自身はそもそも、「指定医」を基準とするのは、あまりいい方法ではないと考えています。
−− それはなぜですか?
辰巳:厚労省は、今回の改定を「質の高い精神医療の評価」とうたっています。つまり「質の高さ」を評価するときに、「指定医」かどうかではかるとしたわけです。
−− 「指定医」であれば質が高い、と厚労省は考えている。「指定医」か否か、という簡単な構図になっているんですね。
辰巳:もちろん「指定医」を取るのは簡単ではありませんし、それによって担保される質があることは認めます。しかしそこには、「子どものこころ専門医」などの小児科の先生の存在が考慮されていませんし、地域で長年患者さんを診てきた精神科の先生の存在も抜け落ちていると思います。
「指定医」というのは、身体拘束をしたり、強制入院をさせることができる資格です。発達障害の子どもを中心に診ている小児科のお医者さんからすれば、「そんな資格はいらない」というのは当然の話だと思います。人権に関わる話でもあるので、中にはあえて取らないという先生もいるんです。「指定医」かどうかで、医療の質がはかれるかといえば、そんな単純なものではありません。
−− ところで「指定医」を持っている先生が、「精神科のコンビニクリニック」をやっている可能性はないのでしょうか。「コンビニクリニック」には、「指定医」はいないんですか?
辰巳:「指定医」がいる「コンビニクリニック」は、もちろんあります。4〜5人お医者さんを抱えてるところだと、何人かは「指定医」を持ってなかったりします。「指定医」のないお医者さんの報酬は下がるかもしれませんが、こういうクリニックでは、そもそも薬をたくさん出したり、3ヶ月に1回心電図をとるなど、報酬を得る方法を駆使しています。
ですから一番困るのはそういったクリニックではなく、発達障害の子どもの相談相手になりながら、薬を出さずに診ているという先生のところなんですよね。
−− 「指定医」の線引きで網をかけようとした「コンビニクリニック」をうまく規制できないとしたら、それもまた問題ですね。この改定の意味自体が問われることになってしまいますから。
●もし、誰も気が付かなかったら
−− もし辰巳さんが気づかず厚生労働委員会で質疑をしなかったら、4割減の対象であった医師の報酬が激減して、ひいては発達障害を診療している医師の減少につながっていたかもしれないんですよね。知らないうちに、大きく医療体制が崩れることになっていたかもしれないと考えると、怖いです。
辰巳:僕一人、というわけではありませんけどね。僕が質疑をした翌日には、参議院で自民党の自見はなこさんが、質疑をしてくれました。与野党から意見があったので、厚労省も急ぎ動いてくれたのだと思います。

衆議院第二議員会館にて
−− この話を発達障害を診ている先生にしたら、「発達障害の診療が狙われている感じはしないんだよね」というお話をしていました。私もなぜだろうと思っていたので、今回実際に起きたことや厚労省の対応などをお聞きして、なぜこのようなちぐはぐなことになっていたのか、やっと理解できました。
辰巳:国もね、発達障害の診療を進めようという気はあるんですよ。早期発見・早期診断を方針に掲げるようになり、例えば大阪府も、国とともに初診の待機時間を短くしようと「初診待機解消事業」を進めているんです。(*)。拠点医療機関と個別のクリニックの連携体制をつくるようにがんばっているのですが、そこで小児科医が発達障害の診療を続けられなくなる改定が行われれば、せっかくつくったネットワークもズタズタになってしまいます。
●就労継続支援B型の事業所、減収に直面
−− 最後に、「就労継続支援B型」の事業所の減収についてお伺いしてもいいでしょうか。「就労支援B型」は、福祉的就労のひとつで、福祉サービスを受けながら働くものです。この事業所へ国から支払われる基本報酬が変更され、多くの事業所の収入が減ることが懸念されています。衆議院厚生労働委員会で、辰巳さんはこの件に対しても反対しておられます。
辰巳:障害報酬の改定ですね。これはひどい話なんですよ。実は2年前にも、国は基本報酬の基準を改定しているんですね。そうしたら国の支払いが思っていたより増えてしまった。だから再び見直します、ということなんです。
−− 支払いが増えてしまったから、やっぱり減らす、ということですか。
辰巳:そうなんですよ。令和6年度の改定で、工賃の計算方法を変更したのです。これは障害特性で毎日来られない利用者を頑張って支援している事業所にとって、プラスの変化でした。実績を評価する算定方法となった結果、基本報酬が上がる事業所が増えたからです。
事業所の仕事が、ある程度正当に評価されるようになった反面、国は想定以上に高い報酬を払わなければならなくなりました。だから、また算定方法を変えて、事業所に支払う金額を下げます、というのが今回の改正です。
−− なんだか、一方的な感じを受けます。
辰巳:こういった福祉系の事業所は、もともとかつかつでやってるところばかりですから、やっと一息つけた感じだったのに、それがたった2年で引き下げられるわけです。
実はこちらの話は、新たに参入する民間企業対策でもあるのです。「民間企業を大儲けさせない」という狙いだと思います。実際、儲けてる企業はありますよ。でもそれを規制するために、真面目にやっている事業所が割を食うというのはおかしい。
都内の利用者20名規模の事業所の影響を聞いてきたのですが、基本報酬の減額分が約110万円。今回、処遇が改善される部分もあって、その加算が34万円。差し引き76万円の減収見込みだというんです。
−− 20人規模でその金額が減るとなると、厳しいですね。
辰巳:職員の給料や、雇用に影響が出ます。神奈川県のある事業所で、すでに退職を促されたという方もいました。これでは障害者施設は、やっていけないと思います。このような基本報酬の引き下げに対しても、「質の確保」という言葉が使われています。
でもね、「質を確保」するなら、普通、報酬は上げなければなりません。
−− 報酬を下げたら、質は下がりそうですよね。
辰巳:そうです。議論が倒錯しているんですよ。工賃を上げ、きちんと福祉サービスを提供できる人員を確保してこそ、質が担保されることになります。この問題は、引き続き注視していかなければなりません。
−− 診療報酬改定も就労継続支援B型の報酬減額の話も、なぜそのようなことが行われているのか、ということがわかりました。一部の病院や事業所への対応のために、他が巻き込まれているという感じを受けました。そういったことに、私たちは気づかなければならないわけですね。
辰巳:そもそも、日本の障害者施策の予算はすごく少ないんです。国と地方を合わせても4兆円ぐらい。先進国であるOECD加盟国の約半分といわれることもあります。その少ない予算の中で、削れそうなところを削っていく。本当に、何を考えてんねん、という話なんです。
(取材日:2026年6月10日/撮影:黒坂真由子)
*参考
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