進学が増えた高専 高山清茂×黒坂真由子 保護者対談 第2回
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●現在の高専の進学
黒坂:現在は、高等専門学校(以下、高専)から進学する学生も増えていますよね。
高山:多様な進学先が選べるようになりましたね。高専自体が「専攻科」を設置して、優秀な学生を手放さないようにしているだけでなく、大学側も積極的に高専生を採用しています。
進学する高専生の多くは、高専生の受け入れ先として創設された豊橋技術科学大学(豊橋技科大)と長岡技術科学大学(長岡技科大)の2つの技科大、そして国立大学の3年生に編入します。最近では、私立大学へ編入する学生もいます。例えば令和6年度の進学状況のデータでは、早稲田大学や立命館大学などの私立大学も、主な編入先として名前があがっています。
慶應大学は、総合政策学部と環境情報学部で、高専生の3年生からの編入を始めると発表しています。2027 年入学試験から実施です。高専生の編入先は、広がっていると感じます。
黒坂:令和6年度の進学率は、約4割でしたね。
高山:僕らの頃よりも、ずいぶん増えています。高専生は大学にとって、なくてはならない存在になっていると思うのです。なぜかというと、いきなり「手が動く」学生ばかりだからです。
黒坂:確かにそうですね。高校1年生から大学2年生にあたる5年間、手に技術をつける授業をずっとしていますから。娘も、高専1年生の頃、旋盤を使った授業で、銀のプレートみたいなものをつくっていました。
印象に残っているのは、バイクの授業です。グループでバイクを解体して、元通りに組み立て直し、ちゃんと動くようにしなくてはいけない。
高山:機械科らしい授業ですよね。そんなふうに5年間、みっちり手を動かした上で大学3年に編入して、すぐに研究室に入るわけです。そうなると、大学の先生もラクなんですよね。編入してきた高専の学生はそのまま大学院へ進学する場合が多いので、一緒に研究してくれたら助かるじゃないですか。
黒坂:実際に、ある工学部の先生が、「基礎的な知識もある上に、何より手が動くから助かる」と言っていました。
高山:大学側も、予算が減らされたり、先生も忙しく、のんびり教育する余裕がなくなってきているのかもしれません。高専で育ててもらった「手が動く」学生が来てくれたらありがたい、と。
ただ、マイナス面もあると思っています。高専では、意識しないと学べないこともあるからです。大学受験をしてきた学生は、一般科目の知識が身についていますし、大学1、2年生では教養科目もあります。そのあたりが、すっぽり抜けてしまう可能性がないとはいえないことです。
黒坂:確かに、歴史の授業でも集中的に学んだのは「産業革命」だと言っていました。娘によると、3年生までは英語や国語などの一般的科目もあったけれど、範囲は限定的だったそうです。
高山:僕が編入した工芸繊維大学は造形工学科で、建築だけではなく、写真やグラフィック、工業デザインを学ぶ学生と同じ部屋で過ごしました。音楽好き、美術好きな人など多様な人々に出会い、かなり刺激を受けました。また、「夜間主コース」ということで、働きながら通う、父親のような年代の人と共に過ごしました。近年、夜間大学が諸事情でなくなってきて残念に思っています。
それまでの5年間、建築好きな人に囲まれて建築のことばかり学んでいたのですが、編入先の大学でずいぶんと視野が広がりました。
黒坂:別の分野に秀でている人から学ぶことは、広い意味で建築にもつながっていく気がします。
高山:そう思います。ですから大学に編入し、これまでとは違った環境に身を置くのはいいことだと思います。その中でこれまで触れてこなかった教養科目の内容を意識的に学んでゆければいいのではないかと思います。
●今後の課題
黒坂:進学に関しては、一点気になることがありました。過去の記事で高専のことを書いたときに、校正者さんから、高専卒業者は準学士の学位を得るのではなくて、「称号を得る」のだと赤字が入ったんです。なんでだろうと思っていたら、いわゆる一般的な大学の学位取得ということになっていない、ということだとわかりました。私も娘が卒業してから知りました。
「日経ビジネス電子版」の記事で、留学のときに「学位をもっていない」ということに気づいた方の話がでていました。海外の大学で「準学士」として認められないとしたら問題です。
高山:国内で困ることはないのですが、海外留学となると問題がでるのでしょうね。ただ、文科省は国際的に通用する学位とするように動いていますから、この問題は近いうちに解決されると思います。