「普通の子」が成長できる高専の教育 高山清茂×黒坂真由子 保護者対談 第3回
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●高専生の特徴
黒坂:高専生の特徴は、どのようなところにあると思いますか?
高山:まず、何かやってみよう、と思うところですね。なんとか自分で解決できるんじゃないかな、とまず考える。そういうところが違う気がしますね。
黒坂:頭で考えるのと同時に、もう手が動いている、みたいな部分ですよね。手で触りながら考える、みたいな。
高山:「どうしよう」ではなく、「なんとかしよう」と思うところかな、と。何かが壊れたり、調子悪ければ、まず、自分で修理をしようみたいに。
黒坂:ちょっとこっちを動かしてみようとかね。
最近、銀行が高専生を採用したというニュースがありました。私はすごくびっくりしたのですが、考えてみると情報科での学びは、銀行の業務にも重なっていくんでしょうね。
高山:文系のイメージの強い企業が高専生を採用するという流れを見ると、課題解決力が求められているのかなと感じます。どこにでも課題はあるじゃないですか。
黒坂:そうですね。
高山:僕は就職を見据えて、高専に進学するのはアリだと思っています。高専というのはそもそも、知識も技術も備えた即戦力を養成するための学校として始まったという経緯がありますから、若くて優秀な高専生は、多くの企業がのどから手がでるほど欲しいと思っているからです。就職率も99%という高さです。
かつて当たり前にあった大卒・大学院卒と給与の差も、解消されつつあります。希望する企業に就職していく高専生は多いですから、進学をせずに就職するというのも、魅力的な選択だと思います。
●「普通の子」が成長できる。ロボコンから考える
黒坂:私たちの子どもはロボコンゼミに入っていたわけですが、高山さんが高専生の頃からロボコンはあったのですか?
高山:僕の在学中にスタートしたんですよね。周りで「ロボットのデザインを頼まれた」という友人がいて、面白そうだなと思った記憶があります。
黒坂:息子さんが高専に入ったのは、やはりお父さんの影響ですか?
高山:特に勧めることはしなかったんですよね。ただ、年末にNHKで放送される高専ロボコンはテレビで見ていました。中学生だったある日、「俺、高専行く」と言い出して。それで、まずは産技高専荒川キャンパスに見学に行ったんです。
黒坂:産技高専は、都立の高専ですね。荒川キャンパスと品川キャンパスがあって、違ったコースが設置されています。
高山:その時、ロボコンの地区予選のチケットをもらったかなにかで、関東甲信越の地区大会を見に行ったんです。全国大会へ向けた予選大会です。
黒坂:地区予選は、近くで見られるし、それぞれのロボットの登場回数も多いので面白いですよね。
高山:そこで東京高専のロボットを見たんですね。それがかっこよくて。ペットボトルを投げる大会です。
黒坂:第31回大会の「Bottle-Flip Cafe」ですね。私も文化祭でこのビデオで見て、強い印象を受けました。
高山:このロボットを見て、東京高専に行くと言い出したんです。
ところで、黒坂さんのお嬢さんは、なぜ高専に?
黒坂:中学3年生の夏に、知り合いから「ロボットが好きなら、高専という学校があるよ」と教えてもらったんです。それで見学に行ったら、設備がすごい。学校の中に工場みたいな場所があったりして。それで娘が「私、絶対ここに来る」と。受験生向けの個人相談があり、相手をしてくれた先生とロボットの話で盛り上がって。今思えば、機械科の先生だったのではないかと。これまで人前でロボットの話は絶対にしなかったのですが。
高山:そうなんですね。女性がロボット好きというのは言いにくい雰囲気があるのでしょうか。そのような中、好きを続けて来られたことと、良い先生に出会えて何よりです。
黒坂:ですから高専に行ってロボコンゼミに入り、当たり前にロボットの話ができるようになって、すごく気持ちが楽になったようでした。
ロボコンゼミを続ける中で、息子さんに変化はありましたか?
高山:人間関係の悩みがあったり、コロナ禍で満足のいく大会ができなかったりなど、楽しいことばかりではありませんよね。でもその中であきらめずに続けてこられたのが何よりです。
黒坂:息子さんは豊橋技科大(豊橋技術科学大学)に進学し、ロボコンを続けているんですよね。
高山:そうですね。現在は「NHK学生ロボコン」に力を入れています。これは大学生と高専の「4、5年生+専攻科」が対象のロボコンです。優勝チームは、ABUロボコン日本代表として、世界大会に進むことができます。
黒坂:豊橋技科大はこのロボコンでの最多優勝を誇るチームですね。毎年のように東京大学と優勝争いをしている印象があります。2026年度は、東大を抑えてみごと優勝となりました。おめでとうございます。
高山:よくがんばったと思います。豊橋技科大は2023年大会では世界大会で優勝もしているんです。この大会は技科大生に対するリスペクトが高く、それはひいては高専生に対するリスペクトと感じ、とても勇気づけられます。
そんな風に、毎年東大としのぎを削っている様子を見ていると、東大の学生に匹敵するか、凌駕するような学生が、まだまだたくさんいるんだよ、と思います。たまたま高専という学校に出合って進路を見つけられた子はいいのですが、そうでない子も世の中にはたくさんいるのではないかと思ってしまうんです。将来技術者になる可能性のある子どもたちが、その能力に見合った大学に進学できるといいなと思います。
黒坂:国立大学に合格するには、国語も英語もできないといけません。だから数学だけ、物理だけものすごく得意な子というのは、合格できないわけですよね。そういう子はけっこういるだろうと思います。
実際、ある国立大学の先生が、「英語がネックになって、数学が得意な子が来てくれない」と言っていましたから。理系の先生は特に、危機感を持っているようですね。
高山:総合型選抜が増えてきている理由の一つは、そのような背景があるのかもしれませんね。
黒坂:確かにそうですね。総合型選抜と学校推薦型選抜を使って入学した学生の割合は、すでに50%を超えています。学校側も、何かに秀でた学生を早めに採用したいと思っているのかもしれません。
高山:ただ、僕が言いたいのは「特に何かに秀でていなくても、高専なら大丈夫」ということです。これは親目線でもあるのですが。
黒坂:それはどういうことですか?
高山:もちろん高専に入学する子の中には、ロボットオタクみたいな子もいます。ただ、うちの息子は特に機械オタクでもないし、ロボットオタクでもないんですよ。単に機械に興味がある普通の子だと思います。
息子が今、ロボコンの最前線で頑張っていられるのは、高専の5年間の教育があったからです。ですから高専というのは、突出して何かが得意な子だけが入る学校ではない、というのが親目線での感想です。
実際に、息子の成績は中学でも特別良かった訳ではないですが、東京高専へ推薦で入学できました。東京高専では、見事に中間の成績でしたが、豊橋技科大へも推薦で行けました。修士へも特別勉強をしていません。試験らしい試験は受けなくても、日々頑張っていけば、大学院まで行くことができ、好きなことを学び続ける道がありました。そのような子どもたちが集まり、東大生にも負けない活躍をしています。学力検査で測ることができないものに夢中になる子どもたちが、学び続けられる道の一つが高専なのだと実感しています。
黒坂:好きな子が集まっているだけで、得意な子が集まっているわけではないですもんね。
高山:そうなんです。5年間ありますから、誰でも十分にやっていける。しっかりした技術を身につけさせてもらえるわけです。そこが高専という学校のすごいところだと思います。
