現場の先生に聞く! 特別支援教育について教えてください(後編)

「特別支援教育」を受ける子どもは増えています。これから受けようか迷っている方に向けて、知っておくべきことを現場の先生にお聞きしました。何を学んでいるのか、偏見はないのか。現場からのレポートです。
黒坂真由子 2026.01.09
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*お知らせ:2026年からタイトルを「黒坂真由子の発達障害レポート」に変更しました。今後ともよろしくお願いいたします!

特別支援教育の運用に関しては、お住まいの地域により違いがあります。特別支援教育を受ける際には、地域の状況の確認が必要です。

●偏見への対応

−− 特別支援教育を希望する方は増えているということですが、そうなると特別支援教育への偏見はないと考えていいですか?

先生:残念ながら、まだ偏見は残っています。特別支援教育を希望されている方が増えている反面、避ける方もいますから。保育園や幼稚園の先生が発達検査を勧めたら強く反発された、という話もいまだに聞きます。

 そういった親御さんの話を聞いていると、どうやら特別支援学校や「特別支援学級(「支援学級」)」に入ったことが、その子の人生の「マイナスの記録」になると思い込んでいるようなのです。そんなことはないんですけどね。履歴書に書くわけではありませんし、「支援学級」から卒業して通常学級に移る子もいるわけですから。親御さん本人が持っているイメージの問題なんです。

 ただ、当初避けていた方の中には、お子さんの困り感を目の当たりにして考えを変える方もいます。

−− なるほど。子どもたちの間ではどうですか?

先生:うちの学校のように特別支援教育が充実していて、「支援学級」や「通級指導教室(通級による指導、「通級」)」に所属する児童数が多くても、なんとなく「あそこは勉強ができない子が行くところ」と思っている子どもは多いと思います。直接口にする子はいませんけどね。

 そういう雰囲気があるので、「苦手なことがあるから、通級に通わない?」と子どもに言っても、「そんなとこ行かないよ」って断わられたり。特に「支援学級」へ所属することへのハードルは、親子ともにあるようです。

−− まだ、ハードルがあるんですね。

先生:偏見もあるし、いじめもゼロではありません。そこでうちの学校では、2024年から「障害理解教育」をスタートしました。通常学級の生徒を対象に、「支援学級」や「通級」について教えています。「何をしているところ?」みたいな話です。

−− 確かに通常学級の子どもは、「支援学級」や「通級」で何をしているのか、知りませんよね。

先生:そこは特別な場所ではない、という話をしています。去年はまず、自分のことを知るための授業を行いました。得意なこと、苦手なことの話をして、「苦手なことは、どんなふうにしたら学びやすいだろう」という問いを投げかけました。すると「少人数」「個別」といった声がでてくるんですね。それで、「支援学級」や「ことばの教室(*)」は、そんな場所なんだよと説明をしました。

 特別支援教育の場は、自分に合った方法を見つけて、自分のペースで学びながら自信をつけていくところだよ、と伝えたのです。

−− 子ども達の反応はどうでしたか?

先生:「『支援学級』の子たちの校庭での活動を見ていて、いつも遊んでいるんだと思っていました。でも、その活動にひとつひとつ意味があり、みんな頑張ってるんだとわかりました」とか、「『何してるんだろう?』って思っていたけど、やっていることがちょっと見えました」とか。

−− そうか。偏見の裏には「遊んでいていいな」といううらやましさもあったのかもしれないですね。

先生:「何をしているのか、発信しなきゃいけない」とつくづく感じました。同じ学校にいるので、私たち教師は、子ども達は当たり前にわかってくれていると思っていたのですが、案外みんな「支援学級」や「通級」のことを知らなかったんだ、ということがわかりました。

−− 同じ学校に通っている子が、「『何してるんだろう?』って思っていた」というのは、ちょっと新しい気づきですね。何をしているかわかったことで、「支援学級」や「通級」を避けていた子が参加できるようになるといいですね。

先生:本当にそうです。これは続けていこうかなと思っています。

*ことばの教室(言語障害通級指導教室):ことばに特化した指導を、通常学級に所属しながら週に数コマ行う。「通級指導教室(通級による指導)」のひとつ。

●「自立活動」とは何か?

−− 「支援学級」では「自立活動」もひとつ大きな要素になってくると思います。具体的にどのようなことをするのか教えてください。

先生:うちの学校では、自立活動を中心として行なっています。以前は毎日1、2時間目が自立活動だったのですが、それだと普通の科目を学ぶ時間がかなり減ってしまうので、現在は子どもに合わせて自立活動の時間を調整しています。

−− 自立活動が多いと、親としては確かに普通の科目の遅れが気になると思います。

先生:そうですよね。ただ、勉強は基礎を中心に個別で行うので、教室よりはスムーズに早く進みます。また、自立活動といっても、表向きは体育や音楽の内容だったりするんです。

−− それはどういうことですか?

先生:自立活動には「健康の保持」「心理的な安定」「人間関係の形成」「環境の把握」「身体の動き」「コミュニケーション」など、大きく6つの区分があります。これらは、それぞれのお子さんに合わせて、組み合わせながら運用していきます。

 例えばコミュニケーションに課題がある子には、体育の授業の準備や片付けの中で、周りと協力する場面を多く設けています。細かいことですが、このようなことが「人間関係の形成」や「コミュニケーション」につながるからです。もちろん体育自体が「健康の保持」「体の動き」に含まれます。チームスポーツを行ったり、そのチームのリーダーをしてもらうことなども含まれます。

−− 体育の授業の中で、人間関係やコミュニケーション能力を育む。

先生:姿勢が悪くて、すぐにぐにゃっとなってしまう子は、体幹を鍛える粗大運動をたくさん行います。ですから同じ体育でも、体幹を鍛えている子もいれば、他者との関わりを学んでいる子もいるわけです。その子の目的に沿った体育の授業を行なっています。

 音楽もその子の目的に合わせた自立活動として行なっています。コミュニケーションを目的に音楽をしている子もいますし、歌詞に重きを置いて言語表現につなげるために行っている子もいます。通常学級の音楽の授業が、音楽そのものを目的としているのと違って、「支援学級」の音楽は自立活動よりとなっているという感じです。あと、ソーシャルスキルトレーニング(SST)も、自立活動の大切な柱です。

−− ソーシャルスキルトレーニングとは、具体的にどのようなことをするのですか?

先生:対人関係やコミュニケーションのスキルを身につけるためのトレーニングです。具体的には、挨拶や気持ちの伝え方、依頼や断り方、感情のコントロールの仕方などを練習します。社会生活で必要な技能を、それぞれの子に合わせてロールプレイングで練習します。

−− 確かに、気持ちを伝える方法を習うことは、なかなかないですよね。そういったことも、自立活動に含まれるのですね。「自立活動が大きな要素」といわれると、生活訓練をするのかなと一瞬思ってしまったのですが、そういうことではないんですね。自立活動が多いから、学ぶ科目がかなり減るのかと思いました。

先生:通常学級の国語、算数、理科、社会という学習内容の時間は、実際には減ってしまいます。ですからこちらも工夫して組み合わせたり、高学年は特に自立活動の時間を少なめにしています。

−− 教科書には沿っているのでしょうか?

先生:さまざまです。教科書に沿って学ぶ子もいれば、下の学年の教科書を使っている子もいます。教科書を使っていない子もいます。今の課題は、自閉スペクトラム症で入ってきた知的に問題のないお子さんです。自立活動が入るので、時間的になかなか応用問題まで進めないんですね。どうしても基礎が中心となってしまいます。それが悩みどころです。

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