男の子と女の子、やっぱり違う。薄目で観察、男子の子育て 漫画家 高田真弓氏 インタビュー

女子ばかりの家庭で育った漫画家、高田真弓さんの最初の子どもは男の子。男子の生態を全く知らないまま、初の子育てが始まりました。男の子育ての「あるある」を笑い飛ばすだけでなく、子育て中の「闇」をも描くことで、ママ達の背中を押してくれる。そんな『男の子育児の「なんで?」を楽しむ本』についてお聞きしました。
黒坂真由子 2026.08.05
誰でも

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●プロフィール

高田真弓(たかだ まゆみ)

イラストレーター/漫画家

36年間ゴリゴリの“子ども苦手勢”だったのに、ひとり産んでみたらまさかの「子育てめっちゃおもしろいんですけど!?」で人生が一変。そこから慌てて2人産んじゃうくらいに計画性はない。毎日バタバタで昨日の出来事すら忘れてしまうため、自分の記録アルバムがわりに漫画を描いている。

●男の子は「王子様」なんだけど……

−− この本を出したきっかけについて教えてください。

高田真弓氏(以下、高田):もともとここに載せた漫画は、今中学生の息子が、小さいときに描き溜めていたものなんです。初めての子どもで、男の子で、言葉とか反応とかが本当に面白かったのですが、なんというか不安になるレベルでもあったんです。私自身が2人姉妹なので、男の子という生き物の生態を間近で見るのが、初めてだったんですね。

−− ご自身に兄や弟がいないし、初の子育てが男の子だったからですね。

高田:だから「本当にこういうものなの?」と思いながら育児をしてきました。そのような中、男の子の行動がマンガチックで絵になるので、記録しておこうと思って描いておいたものなのです。

−− 子育て記録なんですね。

高田:毎日描いていたんですよ。その記録を、今回大放出したという感じです。元々、私の母は、子どもの成長記録を母子手帳に日記形式で書き留めている人でした。感動したものの私にはできないと思ったんですよね。それで漫画にするか、と。それを見た編集さんが、今回の本を提案してくれました。

−− 育児記録がわりの漫画だったわけですね。この本は高田さんの漫画を軸に、花まる学習会の大塚由香先生が、男の子育ての解説をしてくれています。会の代表の高濱昌信先生が監修ですね。

高田:そのおかげで、我が家のケースだけではない男の子育児の本になったと思います。

−− 高田さんは、下に2人の女の子がいるとお聞きしていますが、男の子と女の子は違いますか?

高田:かなり違います。今、そんなことを言ったら炎上しかねない世の中ですが、男の子を育てているママたちの実感は、そうだと思います。男の子「あるあるネタ」で、よく盛り上がりますから。

−− 例えばどのようなところに、違いを感じたのでしょうか。

高田:本当にいろいろあるのですが、余計な動きがやたらと多い、服がすぐにダメになる、棒があるとすぐ戦う、裸になるとすぐに股の間のソレで遊ぶ、などでしょうか。あとは、母親にとっての「王子様」というところですかね。

−− ママだけの「王子様」ですね。

高田:さらに言えば、体力は無限で、ずっと走り回っているし、高いところから飛んでみるし、いつも見えない敵と戦っているし。だから休日はまず、息子「フルフル」の体力をいかに削るかを考えなくてはなりませんでした。

 でも、こんなふうにずっと動いているのって、フルフルだけじゃないんですよ。小学校低学年の男の子って、こういう子が当たり前でした。それはこの本で、プロの目からも解説されています。

−− 息子が小学校3年年のとき、担任の先生が「男子はずっとドッチボールをしています」と言っていたのですが、有り余る体力を使い続けないといけないんですね、男の子は。

高田:そう思います。それなのに、今って、ちょっと人より動きが多いだけで「何か問題があるのではないか」と捉えられてしまいます。でも、たいていの男の子は、元気で走り回っているものなのだから、あまり深刻に考えず、まずは面白ろがってみては、というメッセージも含んでいるんです。

−− 私も同じ問題意識をもっていて、『発達障害大全』でも取り上げました。2022年に文部科学省が発表した調査の中に、ADHD(注意欠如多動症)に関するものがありました。「ADHD的な行動が見られる生徒の割合」という棒ブラフを見ると、小学校低学年が突出して多いのです。小学1年生(5.6%)、2年生(5.8%)、3年生(5.1%)となっていて、これが高校生になると、だいたい1%くらいに落ち着いてくるんですね。

 これは担任の先生が答える形でとられたデータなので、実際にADHDの診断を受けた子どもの数とは隔たりがあるのですが、つまりそれは、小学校低学年の子どもは「ADHD的」と思われやすいということです。さらに男女差も大きくて、小中学校におけるADHD的な子どもの割合は、男子が6.6%なのに対して、女子は1.4%でした。

高田:男子が5倍も「ADHD的」と見られているんですね。でも、それはわかります。小学校時代の男の子の遊んでいる様子を見ていると、どの子も「多動」です。でも、それが当たり前なのであって、全員がADHDということではありません。男の子ってそういうもの、なんですよね。

 発達の相談がすごく増えているのは、ちょっとでも違うことをしたり、ちょっとでも動作やアクションが大きかったりすると、すぐに「発達障害かもしれない」と思ってしまうからじゃないかな、と。特に男の子の「多動」に関しては、もうちょっと大目に見てもいいんじゃない? と感じます。だって、そういう子ばかりですから。

−− そうですね。その時だけでなく、成長を通して同じ傾向が続くかどうかを、見ていかなければいけないのだと思います。

高田:とはいえ、いつも走っていて、転がっていて、戦っている男子の子育ては、本当に大変です。お母さん達には、「薄目でやり過ごす」という方法を身につけていただければいいのではないかと思います。「うすメガネをかける」のです。

−− 「うすメガネ」ですか。

高田:男の子のアクションをいちいち直視してたら疲れちゃうので、うすメガネをかけて薄目でみることで、スルーするという技をおすすめします。有効ですよ。

『男の子育児の「なんで?」を楽しむ本』

『男の子育児の「なんで?」を楽しむ本』

●女の子ママの誘いに応じられない

高田:女の子2人のお母さんに、「うちでお菓子作りしよう」と誘われたことがあるのですが、即座に「ムリです」と断りました。子どもをわきで遊ばせながら、お菓子を作るなんて芸当はできると思えなかったので。ボールにぶつかって粉をかぶったり、置いてある牛乳をこぼしたり、というのが目に見えて。

『男の子育児の「なんで?」を楽しむ本』

『男の子育児の「なんで?」を楽しむ本』

−− 確かに、何かによくぶつかりますよね。

高田:保育園で見ていても、男女の違いはすごく感じました。掲示されている絵で、男の子か女の子かがわかったり。

−− 絵に違いがあるんですか?

高田:水族館に行った時の絵だと、男の子はサメとかタコとか、生物を描いているんですね。女の子は、お友達や先生など、人が入ってきます。芋掘りも同じです。

−− 男子は芋オンリーですか。

高田:そうそう。芋だけの絵とかいっぱいありましたよ。女の子はお友達と芋を掘っている絵が多かったです。女子の絵には、人が含まれていることが多いみたいです。女の子は「人」を描き、男の子は「モノ」を描く傾向があるように思います。フォーカスする対象が違うんですよね。

−− そういえば、息子が中華街へ遠足に行ったとき、見せてもらった写真が「食べ物」だけだったことがありました。お友達が揚げ物を掲げている写真では、揚げ物にピントが合っていて、友達の顔がぶれている…… 確かにそういう傾向はあるかもしれません。

高田:そうそう。フルフルの小学校の卒業記念の会で、クラスみんなでご飯を食べたのですが、女の子たちは一緒に写真を取っているのに、男子はただただスマホゲームをしていました。女子はポーズとかをしながらみんなで楽しげに写真に収まっているのに、男子はとりあえず顔だけ出すって感じで。

−− 確かに、写真にどう映るかに対する情熱は違いますね。

高田:もちろん男女差による不利益や差別はなくさなければならないけれど、違いまでなくさなくてもいいんじゃないかと思います。だって、これだけ違うのですから。子育ての中では、その違いを楽しむことで、子育てのイライラが少し減っていくかもしれません。さらに言えば、この本を読んだ友人が、「うちの犬もそう!」とオスとメスの違いを語ってくれました。オスの犬は、男児あるあるに当てはまるそうです。

−− 想像すると、かわいいですね。

高田:男子って、あれだけ動くのに本当に体力あるんですよね。それでいて、「体力がいつ切れるか」がわかっていないのが困ります。

−− 確かに。うちの息子も、公園から帰ってきて玄関で力尽きて寝ていました。手を洗って、着替えて、おやつ食べて、という体力を残していないんですよね。

高田:電池切れ、ですよね。ほんとに、パタンと寝ちゃう。あと、何かに夢中になってトイレに行くのを忘れてしまう。妹も息子を育てているのですが、よくそれで激怒していました。

−− 夢中になると、生理現象まで忘れてしまう。

高田:そうなんですよ。フルフルもすごくワーってなっていろいろ忘れているときがあります。でも、一人で静かに本を読んでいたいときもあるみたいなんです。ある時、「オレ、2人いるんだよね」と言っていたことがありました。陽キャな自分と陰キャな自分が同居しているようです。

−− そんなふうに自分を見つめられるなんて、なんだか大人ですね。

高田:その陰と陽のギャップに、ママはやられてしまうのかもしれません。ガサツなようで意外と繊細なのも可愛いところでもあり、難しいところですね。

●親にも心の支えが必要

−− 息子が小さかった頃を思い出しつつ、なんどもクスッとしながら読んだのですが、後半にシリアスな話がでてきます。「親にだって心の支えが必要って話」は、胸に響きました。夫が海外に行き、ワンオペで2人のお子さんの面倒をみていたときの話です。

高田:たった3か月だったのですが、かなりきつかったです。最初の1週間は、むしろ快適だったんですよ。夫がいると、いろいろと期待してしまうじゃないですか。あれをやってほしい、これをやってほしいと。でも期待通りにはいかないから、イライラしてしまう。そのイライラがなくなったので、「もしかして夫がいないほうがいラクかも?」などと思っていました。

−− その思いが変化したのは、いつ頃ですか?

高田:半月くらい経ってからですね。些細なことで、子どもを怒るようになっていました。あまりにも疲れていたからです。そして、そのイライラをぶつける相手がいないために、負のエネルギーがダイレクトに子どもに向かってしまったんです。子どもは何も悪くないのに。

『男の子育児の「なんで?」を楽しむ本』

『男の子育児の「なんで?」を楽しむ本』

−− 大人がいないことで、感情の矛先がお子さんに向いてしまった。

高田:この時、「家事や育児の物理的な助け」と、「心の助け」はまったく別物なんだ、ということに気がつきました。意見が違ったとしても、一緒に悩んでくれる存在かどれだけ大切かわかったんです。

−− 子育てに大切なのは、お母さんの心の安定だということが伝わってきます。

高田:子育ては楽しいこともたくさんあるけれど、それだけではありません。大変なことも本当にたくさんあります。お子さんももちろん大切ですが、何よりお母さんの心を第一に、と思います。そうすることが、ひいてはお子さんの幸せにつながるからです。

−− 男の子育ての「あるある」を楽しむだけでなく、お母さんの心を守るためのちょっとした技術を身につけることができる本ですね。読むと、余計な不安から解放されて心が軽くなるお母さんは多いと思います。

●プロフィール(書籍より)

高濱正伸(たかはま まさのぶ) 花まる学習会代表

1959年熊本県生まれ。東京大学卒、同大学院修士課程修了。花まる学習会代表。NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。算数オリンピック作問委員。日本棋院顧問。環太平洋大学客員教授。武蔵野美術大学客員教授。主な著書に、6.7万部「お母さんのための男の子の育て方」、2.7万部「女の子の育て方」(以上、実務教育出版)がある。

高田真弓(たかだ まゆみ)イラストレーター/漫画家

36年間ゴリゴリの“子ども苦手勢”だったのに、ひとり産んでみたらまさかの「子育てめっちゃおもしろいんですけど!?」で人生が一変。そこから慌てて2人産んじゃうくらいに計画性はない。毎日バタバタで昨日の出来事すら忘れてしまうため、自分の記録アルバムがわりに浸画を描いている。インスタでは子育て漫画をせっせと更新中(@kamekonomanga)。お仕事では、学研「こそだてまっぷ」で漫画「ウチュージンといっしょ」、雑誌「ダイヤモンドZai」で「恋する株式相場」を連載中。日常も仕事も、なんでも節操なく漫画にしていくスタイル。無類の亀好き。齢30歳になるリクガメを飼育中。子育ては大変だし修行だけど、それでも最高! 作品・プロフィールはこちら → http://www.9taro.net/

大塚由香(おおつか ゆか) 花まる学習会 講師支援部部長

花まる学習会の教室長として幼児・小学生・中学生の指導を経験し、スタッフの育成を担当。親子と関わり自分も子育てをする中で、「親が目の前のわが子を観察し自分の心と向き合う子育て」の大切さを痛感し、4歳以下の子どもと保護者を対象とした親子遊びをとおして学びあう「花まるおやこクラス」を立ち上げる。それぞれの親子らしさを大切に、親子の日常に寄り添うサポートにあたる。

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