『うちの子は字が書けない 発達性読み書き障害の息子がいます』 千葉リョウコ 宇野彰(監修) ポプラ社(2017年7月刊行)
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発達性読み書き障害(発達性ディスレクシア)の息子をもつ漫画家の千葉リョウコ氏のコミックエッセイ。「読み書き障害について知りたい」「子どもの字に不安がある」という方に、まず最初に手にとってもらいたい本です。
同じく発達性読み書き障害の息子を育てる私は、全編「あるある……!」の連続で、同じ思いをしていた家族がいたんだなとしみじみしながら読み進めました。また、著者の千葉リョウコ氏が息子のフユ君との経験を漫画にしたこと、それをフユ君に相談して決めたことも自分と重ねてしまいました。私自身、息子の読み書きができない理由を知りたくて、発達障害の連載を始めたからです。
私が記事を書くということは、息子に学習障害があると知らせることになります。ですから、始めるのであれば「息子の許可を取ってから」と考えていました。息子が6年生になったある日ファミレスに誘い、「発達障害の連載がしたい」と切り出しました。こういう障害があることを、世の中の人に知ってもらいたいという思いを伝えました。
息子の反応は私の予想とは違い、なんだかあっけらかんとしていて、「別にいいよ。それ(発達性読み書き障害)があるから、僕ひとり学校でiPadを使っているんだし」とのこと。なんだか「大きくなったなあ」としみじみしたものです。
……という話も、この本のエピソードと重なります(千葉リョウコさんとフユ君のエピソードは、ぜひ漫画で読んでください)。
本書は、監修者でNPO法人LD・Dyslexiaセンター理事長でもある専門家の宇野彰先生が、フユ君と母である千葉氏に告知をしている場面から始まります。
*漫画は告知の場面から始まる
続く「治りますか?」というフユ君の問いかけに「残念ながら、障害は病気ではないので治りません」という答えに、本人よりも落ち込んでいるように見える母の顔。子どもの発達性読み書き障害に気が付かなかった後悔を語る母に、「お母さんのせいではありません」と言い切る宇野先生。
このシーンは、発達性読み書き障害と診断された多くの家族が経験するものだと思います(私も「治りますか?」と聞きました)。
日本ではまだまだ発達性読み書き障害は知られていません。40人クラスに3人ほど、読むのが苦手な子はいるとされているにもかかわらず、ADHDやASDを知っていても、発達性読み書き障害は知らないという人も多いのです。実際、発達障害に関する講演などでは、ADHDやASDが中心で、発達性読み書き障害について語られることはあまりありません。
本書はフユ君の幼稚園時代から、高校生までの成長が漫画で綴られます。私が一番ほろっときたのは、「フユの今までとこれから」という、告知をフユ君が回想する場面です。
「自分のせいでも」
ましてやお父さんやお母さんのせいでもない」
…なんだ…
なーんだ…
障害だったんだ
練習しても文字が書けない。宿題に時間がかかる。黒板が写し終わらない。頑張っても、練習しても文字が書けない。でも、その理由がわからないし、説明できない。先生からは努力が足りないと言われ、親からはがっかりされる。
そして何より、できない自分自身にがっかりしてしまう。
そんな状態に理由が見つかった。フユ君の場合、告知はきっと不安から抜け出すきっかけになったのだと思います。発達障害の告知に対しては、フユ君に限らず「ほっとした」という感想がよく聞かれます。「伏線回収」と言う人もいます。「練習しても練習しても、どうして書けないんだろう」の答えをくれるからです。
本書は章と章の間に、「発達性ディスレクシアのこと もっと教えて! 宇野先生」という解説が入ります。こちらをあわせて読むことで、まず知っておきたい知識を得ることができるはずです。
本書には『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら 発達性読み書き障害の子の自立を考える』という続編もあります。一気に読むのもオススメです。
千葉リョウコ
漫画家。千葉県在住。家族は夫と高校生の長男、中学生の長女、小学生の次男とトイプードルの5人+1匹。長男が小学6年生のとき、「発達性読み書き障害」と判定され、以来、ともにトレーニングや受験に取り組んできた。2017年現在も二人三脚で奮闘中。エッセイは本作が初となる。(プロフィールは発刊時のもの)
監修:宇野彰
筑波大学教授、NPO法人「LD・Dyslexiaセンター」理事長。著書に『ことばとこころの発達と障害』(永井書店)、『改訂版 小学生の読み書きスクリーニング検査 − 発達性読み書き障害(発達性dyslexia)検出のために』(インテルナ出版)などがある。
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