東大ママ、特有の悩みとは? 
「凸凹キッズ東大ママの会」(前編)

「凸凹キッズ東大ママの会」を立ち上げた田島基世さん。発達に個性のある子育てをしている東大出身ママの悩みを、語り合う場を主宰しています。「東大ママ」には、人とは共有しにくい悩みがあるといいます。
黒坂真由子 2026.02.05
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●プロフィール

田島基世(たじま・もとよ)

東京大学を2000年に卒業。発達障害の診断は付かなかったがとても個性的な長男と、ゆるキャラ系のとても天使な次男、2人の男の子の子育て中。「凸凹キッズ東大ママの会」を立ち上げ活動している。

●「凸凹キッズ東大ママの会」とは?

−− 「凸凹キッズ東大ママの会」は、いつ発足したのですか?

2024年の3月です。

−− きっかけについて教えてください。

東京大学には「さつき会」というOG会があるのですが、さつき会のイベントのひとつとして開催したのが始まりです。もともとさつき会の幹事の方と交流があり、イベントのお知らせがよく送られてきていたのですが、けっこう華々しいイベントが多いんですよ。

−− 東大OGの会ですもんね。

いわゆる社会的に成功している方々が集まって楽しむようなイベントが中心で。

−− 例えば、どのようなイベントですか?

バリバリ働いている経営者や専門職のOGの方の講演とか、「集まってテニスをしましょう」みたいなものです。会員の平均年齢は高めなのですが、イベントに集まるのは60代~70代くらいの方とかが多いですね。  

例えば先日、「親子で参加できる」という触れ込みのバードウォッチングの会に参加してみたら、親子参加は私を含めて3組で、あとは全員60代以上の方でした。悠々自適の方が、余暇を楽しむという感じです。

−− 活躍している方の講演会と、趣味を楽しむ会の2本柱。

私は、「東大OGってそんな人ばかりでもないでしょう」って思ったんですね。「東大卒女子」というと、すごく華々しい人生を送っていると思われがちなのですが、そうじゃない人もけっこういるよ、という話になって。そういう人に焦点を当てられるようなイベントがあってもいいかもしれない、という話をさつき会の幹事の方としていたのです。

−− 確かに、みんながみんな成功していて悠々自適、というわけではないですよね。

でも、あんまり後ろ向きなイベントはやりたくなかったので、どうしようかと考えていました。そんな時、周りの東大卒の友人や同級生と話をしていて、発達の特性のあるお子さんの育て方に悩んでいるという話がちらほら出てきたのです。じゃあ、そういうイベントをやってみようか、ということになりました。

−− では、最初は単発のイベントだったんですね。

さつき会にはメーリングリストがあるので、イベントのお知らせはメールで届きます。そこに案内を出してもらいました。診断に至らないグレーゾーンを含んだ発達の特性のあるお子さんをお持ちの方を対象に、「気軽に集まって話をしませんか?」と呼びかけました。

−− 最初、何人くらいが集まったのですか?

10名くらいですね。現在は20人ほどです。

−− 年齢層はどうですか?

けっこう広いです。30代〜70代。

−− 70代となると、お子さんはもう大人ですね。

そうですね。すでに社会人という方もおられます。

●東大を卒業したママ達の特有の悩みとは?

−− みなさん、どのようなことで悩んでいるのでしょうか?

大きく分けると悩みの方向性には、2つあります。一つ目は、「自分の価値観が通用しない」ということです。これは誰しも当てはまることかもしれませんが、「東大ママ」の場合顕著だと思います。「必勝法」が通じない、と言ってもいいかもしれません。

−− 「必勝法」ですか?

はい。東大に行くような女子って、「勝手に自分で勉強して、勝手に大学に合格した」みたいな方が多いんです。親にお尻を叩かれてとかではなく、自分で自分を「セルフプロデュース」してきている。逆に言うと、それくらいできないと、入れない大学なのかもしれません。自分で勉強する内容を考え、スケジュールを立て、1 日何時間勉強し、いつどの模試を受けて……。そんな風に、全部自分で考えて、合格した方が多いんですよ。ある意味「大学に入る」というところまでは、自分なりのやり方、つまり「必勝法」で成功してきた、というわけです。

−− 東大に受かる方法を、自ら編み出してきた。ご自身の「必勝法」がある、ということですね。

…で、子育てでも、そのやり方を踏襲させればいいと思っていたのに、全く通用しないわけじゃないですか。「スケジュールを立てて自分で勉強する」とか、冗談でしょう? みたいな感じで。発達障害の場合、このケースに当てはまる子が多いかもしれません。好きなことはスケジュール関係なくやるし、嫌いなことはスケジュールも立てない。だから、自分が良しとしてきた教育法、自分で自分を育ててきたその「必勝法」が通用しないのです。

−− せっかく編み出した「必勝法」があるのに、ご自身の子どもに使えない。

国立大学の受験ですから、科目数も多いですよね。合格してきたママ達は、それらをオールマイティにできているわけです。「数学が苦手」と言っている人でも、偏差値は60超えるという世界です。ですから、どう教育をしていけばいいのか、わからなくなってしまうんですね。

−− 能力に凸凹のあるお子さんは、「苦手」の落ち込みが東大ママのそれとは比べ物にならないくらい低くなってしまうことがありますから。

だから、「何でできないの」が口癖になってしまうんです。それが最初の悩みです。

●周囲に話せない理由とは?

もう一つは、周囲に言えないことです。子どもが発達の悩みを抱えていて、学校でお友達とトラブルを起こしたりしますよね。そういう時に「カミングアウトできれば少しは楽なんだろうな」と思うことがあります。

−− 周囲に発達の悩みがあることを言えない、ということですか?

言えなくて悩んでいる方はたくさんいます。先生やお友達に言えればいいのですが、言ってしまうと、嘲笑というか「ママは東大に行っているのに、かわいそう」みたいなことを思われがちなんですね。もちろんこれは東大だけでなく、高学歴の大学はどこも似ているのかもしれませんが。

−− 東大ならでは、ということはあると思います。東大には象徴的な部分がありますから。

どうしても受験や勉強における「成功者」とみなされてしまう面があるからでしょうね。「ママは優秀だけど、子どもは残念」と思われてしまったり。もしくは「そういう態度をとられるのではないか」と恐れて、カミングアウトできないママ達もいます。

ただ、カミングアウトしなければしないで、授業中ウロウロしたり逃げ出したりする子を見て、また言われるんです。「ママは東大なのに、なんなのあの子」って。

−− いずれにせよ、言われてしまうということですね。

そうなります。また、見た目にはわからない発達の問題で困っている場合、単に出来が悪い子みたいな扱いをされてしまうことがあります。そんな時に、「自分までバカにされていると思ってしまう、そんな自分自身が嫌だ」という声もあります。

−− そういうことがあるんですね。たとえ出来が悪くても、親と比較して揶揄されるということは、普通はないですもんね。

「相手がそう思っているのではないか」と考えてしまう自分も嫌だし、逆に「大変だね」って同情されるのも嫌だし、みたいなところがあって、周りに言えないんですね。

「こんなことがあって」という子どもの話を、気軽にできる場がないのです。それなら同じ環境の同じ境遇の人だけで集まれば話ができるんじゃないか、と考えて会にしたという部分があるのです。

−− 最初に集まった時、どのような感じでしたか?

「まず自己紹介から、2〜3分で」と言ったのに、話が止まらない、止まらない。一人目から10分以上話続けて、私が止めに入りました。「私と子どもの話を聞いてほしい」という強い気持ちが伝わってきました。そのままだと、自己紹介だけで会が終わりそうでしたね。皆さん、とてもしゃべりたかったのだと思います。

−− 似たような人が集まって話をする自助グループのような側面がありそうですね。

そうですね。ただ、一般的な自助グループには入りづらいのです。なぜかというと、「そうは言っても」と言われてしまうからです。

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