第2回 デジタル教科書の活用を阻む「申請主義」と「画像処理」宮﨑舞氏 ロングインタビュー

連載「語られないデジタル教科書への困惑 −− LD保護者の立場から−−」の第2回。デジタル教科書の話題では、「紙かデジタルか」が議論の中心ですが、実はそのずっと手前に問題はあります。それは「申請主義」です。デジタル教科書が正式な教科書となっても、この申請主義は残るのではないか、という不安は尽きません。
黒坂真由子 2026.08.28
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 LDの情報を集約するホームページを立ち上げた一般社団法人カラフルバード代表理事の宮﨑舞さんに、デジタル教科書の申請主義の問題点についてお聞きしました。また、「読み上げ機能がつかないデジタル教科書がある」ということも教えていただきました。全4回のロングインタビューの2回目です。

  • 第1回 支援にたどりつけないLDの子

  • 第2回 活用を阻む「申請主義」と「画像処理」(←今回はこちら)

  • 第3回 残る? 「申請主義」の壁

  • 第4回 今すぐ使える音声教材とデジタル教科書

●プロフィール

宮﨑舞(みやざき まい)

一般社団法人カラフルバード 代表理事。方が違う子の親の会ルピナス副代表、デジタルアクセシビリティーアドバイザー、デジタル庁デジタル推進委員、UDBook音声教材の製作・提供に関する調査研究委員会委員、東京都発達障害者支援地域協議会委員、ほか。

修士課程の大学院生。東京都教育委員会発行「LIFT~一人ひとりに合わせた 学び方の選択肢 端末で広がる読み書き支援」制作協力。読み書きが苦手な子がいます。

●デジタル教科書があるのに、使えない

−− 2026年6月に「学校教育法等の一部を改正する法律」が成立し、2030年から、デジタルのみの教科書や、紙とデジタルのハイブリッドの教科書が、正式な教科書として認められるようになりました。つまり、検定と無償化の対象になる、ということです。これまでも「デジタル教科書」はありましたが、これらは「代替教材」という扱いで、申請がないと利用できませんでした。カラフルバードさんに寄せられる話の中で、教科書に関する一番の困り事はどのようなものですか?

 やはり「申請主義」の話ですね。そこに尽きますよね。この先のデジタル教科書の話をする前に、現在地を確認しておいた方がいいと思います。現在も代替教材としての「デジタル教科書」はあります。ここで皆が困っているのが、申請主義です。全国のカラフルバードのメンバーが、学校の先生に「デジタル教科書を使いたい」と申請するのですが、まず担任でブロックされることが多いですね。

−− 先生はデジタルの代替教材、つまりデジタル教科書があることを知らないんですか?

 知らないんです。担任がダメだと次は管理職に頼むのですが、それでも許可されないことが多いですね。

−−教科書を読み上げて使いたい場合、現在はデジタル教科書を購入するか6種類の音声教材のどれかを申請して利用することになります。

 そうなります。簡単に説明しておくと、例えば、音声教材で一番有名なマルチメディアデイジー教科書」は、日本障害者リハビリテーション協会が、読みの困難がある子ども向けに製作しているもので、無料ですが申請式です。しかも年度ごとに更新が必要です。ルビがふられていたり、読み上げた部分がハイライトされる機能がついています。ただ、収録されている教科書は限られています。

 デイジーに収録されていなかったり、デイジーの使い勝手が合わない場合は、個人で買うしかありません。「Lentrance(レントランス)」というデジタル教科書のストアに希望の教科書があれば、そこで購入もできます。また、学校を通してしか購入できない教科書会社の場合は、学校に販売店経由で個人購入をしたいと依頼する必要があります。

−− 申請も必要だし、簡単に買えるわけではなさそうですね。

 そうなんですよ。2026年5月に「デジタル教科書・音声教材勉強会(*1)」を開いたのですが、その会のためにとったアンケートがあります。購入の際のトラブルを聞いたものです。アンケートの件数は38人と少ないのですが、生の声を集めることができました。購入に際して、「苦労したが購入できた」が51.8%、「スムーズに購入できた」は13%、「購入できなかった」は36%いました。

−− 36%もの人が購入できなかったのですか?

 そうなります。県教委まで含めて「売っちゃダメらしい」という答えだったとか、「デジタル教科書をiPadに入れて持ち込まれたら困る」などいろいろな理由をつけて、「買わせてはいけない」という結論になったという話がけっこう多くて。スムーズに買えたという人は本当に少なく、買えたとしても皆さん苦労している。

 あと、教科書販売業者が「一般販売はできない」「学校単位での一括購入しかできない」と断言してしまうケースがありました。実際に販売店から断られた人は14.3%いました。

−− 本当に個人で買うことはできないのでしょうか?

 そんなことはないはずなんです。販売会社から「個人購入している人がいないから、検討していいかわからない」と言われ、学校に聞くと「学校で認められるかわからない」と言われ……。そんなふうに、販売店と学校の間で結論を出してもらえず、ぐるぐるしている人もけっこういました。販売店と学校、どちらかが「ダメ」と言うのではなく、両方から「わからない」と言われて、諦めてしまう保護者もすごく多いんですよ。

 提示されたデジタル教科書1冊の金額が、25,000円だった、という話もありました。

−− 高すぎませんか?

 「国語1学年分のライセンスを全て購入する」という計算だったそうです。そんな手続きに、親御さんは混乱して、クタクタになっているんですよね。こちらにその方の体験談があります。

−− 私も申請が多すぎて、「こんなことをしているうちに、大人になってしまう」と思ったことがあります。

 わかります。申請してから使えるようになったとしても、翌年にはまた申請をしなければなりません。担任が変われば、担任への説明を一からスタートです。

 それに、4月から始まるのに、5月末のこのイベントで、今年度のデジタル教科書が届いていない人が多数いました。学校は4月から始まるのに、デジタル教科書の用意は整っていないのが、どうやら当たり前のようです。

−− 今後デジタルが正式に教科書になった場合に、5月末から、というわけにはいきませんよね。

 このようなラグをなくしていかなければなりません。

 さらに問題なのが利用期限があることです。自身で購入しているのに、デジタル教科書の利用期限は年度末なんですね。これに受験生はとても困っています。中学3年生の生徒が受験勉強のために、中1、中2の教科書を使いたくても、ライセンスが年度末で切れるので使えないんです。

−− そうなんですね。紙は持っていても問題ないのに。

 現在、実験的に英語のデジタル教科書が無償配布されているのですが、そのためにかえって買いにくくなっている教科書会社もあるようです。いつでも好きな学年のデジタル教科書を買えるようにして、せめて、中学3年間くらいは使わせてほしいと思います。

  • *1)イベント報告 第1回タヨーナフェス~デジタル教科書・音声教材 勉強会&体験会 ―「読む」を支える選択肢を知る一日― https://sld-colorfulbird.com/archives/14061

●ただ「デジタル」なだけ? 読み上げ機能のないデジタル教科書

 −− 2030年から、デジタルのみの教科書や、紙とデジタルのハイブリッドの教科書が、正式な教科書として認められるようになりました。

  • 紙+デジタルのハイブリッド

  • 完全デジタル

の3つの形から、教育委員会などが選ぶことになっています。このハイブリットというのは、どういうイメージなのでしょうか?

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