「自閉症はモンゴル語を話さない?」松本敏治先生最新レポート 第2回 津軽から始まった研究が海外へ
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第1回「自閉症は津軽弁を話さない」から始まった調査
第2回 津軽から始まった研究が海外へ(←今回はこちら)
第3回 モンゴル調査で見えてきたASDの言語状況
●プロフィール

ウランバートルにて。後ろに映るのは建物の上にそびえ立つ巨大なチンギスハンの像
松本敏治(まつもと としはる)
(教育学)。公認心理師、特別支援教育士スーパーバイザー、臨床発達心理士。北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。稚内北星学園短期大学講師・助教授、室蘭工業大学助教授、弘前大学助教授をへて2016年まで弘前大学教授。弘前大学教育学部附属特別支援学校長、弘前大学教育学部附属特別支援教育センター長を歴任。現在は、教育心理支援教室・研究所「ガジュマルつがる」代表。長年、発達障害児者への教育相談・支援活動を行う。著書に『自閉症は津軽弁を話さない』『自閉症は津軽弁を話さないリターンズ』(以上、角川ソフィア文庫)、『自閉症は英語がお好き!?』(福村出版)など。
●海外へ目を向ける
研究をする中で、海外の情報も目にするようになりました。その中で、面白い論文がありました。そこでは、「アイスランドのASD(自閉スペクトラム症)には、ASDの若者は、アイスランド語よりも英語を好んで話す、というコンセンサスができつつある」と報告されていました。2016年の論文でした。
そこで、アイスランドのASD、4人の方にインタビューをして状況を聞いてみたのです。このインタビューに関しての論文は、『LD研究』に発表しています。
−− アイスランドは英語が一般的に使われているのでしょうか?
アイスランドは人口40万人弱の国です。日本の1億2000万人強と比べると、とても少ないことがわかります。母国語はアイスランド語なのですが、英米圏のエンターテインメントなメディアは、英語のままということがほとんどなのです。
−− 40万人だと、アイスランド語に翻訳しても、利益が出なさそうですね。
ですから大抵の方は、英語も話せます。インタビューをした25歳のASDの女性の場合、日常生活の8割が英語だと言っていました。
−− 日常生活の会話も英語にしちゃうのですか?
はい。「英語のビデオやゲームで何を言っているかを知りたくて、一生懸命勉強した。ゲームは全部英語なので英語がわからないとやれない」と言っていました。また、「自閉症の友達は、みな英語がペラペラ。アイスランド語はジョークを言うために使う」ということでした。
−− 会話が英語なんですね。親御さんも喋れるから、日常も英語になるのか。
そのようです。その4人のうち3人の方が日常生活の8割以上を英語で過ごしているということでした。残り1人は、5割だそうです。これはどういうことかというと、一つの文章の中で、アイスランド語と英語がごちゃ混ぜになるんだそうです。両方の言語ともに、SVOが基本ということでした。
−− なるほど。文法上、似たところがあるんですね。
相手によって使い分けている方もいました。おじいちゃん、おばあちゃんからは、英語があまりわからないので「アイスランド語で話して」と言われる。その時は、がんばってアイスランド語を話そうとするのだが、「単語が出てこなくて英語になってしまうことがある」と言っている方もいました。
−− そう聞くと、本当に英語の方がラクなんですね。
●北アフリカ、チェニジアからの報告
ASDの人の中に、周囲の日常言語とは異なる言葉を使う人がいるという報告は、北アフリカのチュニジアからもありました。2019年の論文で、「北アフリカでASDに関わる実践家は、学齢前や学齢初期であるにも関わらず、日常会話ではほとんど使われずテレビでしか聞くことのない『現代標準アラビア語』を顕著に習得しているASDの子どもに頻繁に出会う」というものでした。