「自閉症はモンゴル語を話さない?」松本敏治先生最新レポート 第2回 津軽から始まった研究が海外へ

日本全国の調査を経て、どうやらASDの子は方言を使わない傾向があることがわかりました。では、海外ではどうなのか? 全3回のインタビューの第2回目です。
黒坂真由子 2026.09.09
読者限定

「黒坂真由子の発達障害レポート」では、専門家からの情報、現場のリアルな情報を記事にしています。子育てや学校、受験、仕事などにまつわる、個人の経験も配信しています。

サポートメンバーの登録で、発達障害についての継続的な発信が可能になります。メンバーとしてのご登録をお願いいたします。メンバーシップは、無料、有料から選べます。どんな記事があるかにつていは、こちらをご覧ください。

 ご検討いただける方は、下記ボタンからお進みください。

  • 第1回「自閉症は津軽弁を話さない」から始まった調査

  • 第2回 津軽から始まった研究が海外へ(←今回はこちら)

  • 第3回 モンゴル調査で見えてきたASDの言語状況

●プロフィール

ウランバートルにて。後ろに映るのは建物の上にそびえ立つ巨大なチンギスハンの像

ウランバートルにて。後ろに映るのは建物の上にそびえ立つ巨大なチンギスハンの像

松本敏治(まつもと としはる)

(教育学)。公認心理師、特別支援教育士スーパーバイザー、臨床発達心理士。北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。稚内北星学園短期大学講師・助教授、室蘭工業大学助教授、弘前大学助教授をへて2016年まで弘前大学教授。弘前大学教育学部附属特別支援学校長、弘前大学教育学部附属特別支援教育センター長を歴任。現在は、教育心理支援教室・研究所「ガジュマルつがる」代表。長年、発達障害児者への教育相談・支援活動を行う。著書に『自閉症は津軽弁を話さない』『自閉症は津軽弁を話さないリターンズ』(以上、角川ソフィア文庫)、『自閉症は英語がお好き!?』(福村出版)など。

●海外へ目を向ける

 研究をする中で、海外の情報も目にするようになりました。その中で、面白い論文がありました。そこでは、「アイスランドのASD(自閉スペクトラム症)には、ASDの若者は、アイスランド語よりも英語を好んで話す、というコンセンサスができつつある」と報告されていました。2016年の論文でした。

 そこで、アイスランドのASD、4人の方にインタビューをして状況を聞いてみたのです。このインタビューに関しての論文は、『LD研究』に発表しています。

−− アイスランドは英語が一般的に使われているのでしょうか?

 アイスランドは人口40万人弱の国です。日本の1億2000万人強と比べると、とても少ないことがわかります。母国語はアイスランド語なのですが、英米圏のエンターテインメントなメディアは、英語のままということがほとんどなのです。

−− 40万人だと、アイスランド語に翻訳しても、利益が出なさそうですね。

 ですから大抵の方は、英語も話せます。インタビューをした25歳のASDの女性の場合、日常生活の8割が英語だと言っていました。

−− 日常生活の会話も英語にしちゃうのですか?

 はい。「英語のビデオやゲームで何を言っているかを知りたくて、一生懸命勉強した。ゲームは全部英語なので英語がわからないとやれない」と言っていました。また、「自閉症の友達は、みな英語がペラペラ。アイスランド語はジョークを言うために使う」ということでした。

−− 会話が英語なんですね。親御さんも喋れるから、日常も英語になるのか。

 そのようです。その4人のうち3人の方が日常生活の8割以上を英語で過ごしているということでした。残り1人は、5割だそうです。これはどういうことかというと、一つの文章の中で、アイスランド語と英語がごちゃ混ぜになるんだそうです。両方の言語ともに、SVOが基本ということでした。

−− なるほど。文法上、似たところがあるんですね。

 相手によって使い分けている方もいました。おじいちゃん、おばあちゃんからは、英語があまりわからないので「アイスランド語で話して」と言われる。その時は、がんばってアイスランド語を話そうとするのだが、「単語が出てこなくて英語になってしまうことがある」と言っている方もいました。

−− そう聞くと、本当に英語の方がラクなんですね。

●北アフリカ、チェニジアからの報告

 ASDの人の中に、周囲の日常言語とは異なる言葉を使う人がいるという報告は、北アフリカのチュニジアからもありました。2019年の論文で、「北アフリカでASDに関わる実践家は、学齢前や学齢初期であるにも関わらず、日常会話ではほとんど使われずテレビでしか聞くことのない『現代標準アラビア語』を顕著に習得しているASDの子どもに頻繁に出会う」というものでした。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、2302文字あります。
  • ●英語しか話さない日本人の男児

すでに登録された方はこちら

誰でも
「自閉症はモンゴル語を話さない?」松本敏治先生最新レポート 第1回「...
誰でも
『「勉強ができない」には理由があった −− 学習障害ってなんだろう?』...
誰でも
数の概念を遊びながらつくるプレイフルカード
読者限定
第4回 今すぐ使える音声教材とデジタル教科書 宮﨑舞氏 ロングインタビ...
読者限定
第3回 残る? 「申請主義」の壁 宮﨑舞氏 ロングインタビュー
読者限定
第2回 デジタル教科書の活用を阻む「申請主義」と「画像処理」宮﨑舞氏 ...
誰でも
語られないデジタル教科書への困惑 −− LD保護者の立場から−− 宮﨑...
誰でも
男の子と女の子、やっぱり違う。薄目で観察、男子の子育て 漫画家 高田真...