息子が自閉スペクトラム症と知って 第2回 「当たり前」のプレッシャーから逃れて

環境の変化が苦手な自閉スペクトラム症の息子が、中東で生活することに。何が変わったのか。東京都在住のお父さんにお聞ききしました。
黒坂真由子 2026.04.07
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●海外での生活で、大きく変化

 息子がいい意味で変化したのは、海外での生活によってでした。私は3年ほど、仕事の都合で中東に駐在していたのですが、1年半を過ぎた頃、家族を呼び寄せました。息子は年長さんの残り半年くらいを、現地の幼稚園で過ごし、現地の日本人学校へ1年生として通うことになりました。

−− 小学校 1年生が、海外の日本人学校で始まったのですね。

 全校生徒の人数は小学校、中学校合わせて11人しかいなくて、小学1年生は息子1人でした。そこに担任が1人ついてくれるので、最初の半年ほどはマンツーマンで授業を受けていました。そこでメキメキ変わってきました。

−− これは私の想像なのですが、海外では「自分が周りと違っている」という感覚を持たなくなりそうですね。

 もしかすると、これまで日本における「当たり前」を押し付けられていたことに、気づいたのかもしれません。なんだか、すごく落ち着いたんですよね。

 あと子どもにとても優しいお国柄でした。私は助手に息子が自閉スペクトラム症(以下、ASD)だということを伝えていたのですが、「そんなの普通じゃん」みたいな反応でした。いい意味で、重く考えていないんです。

−− 発達障害やASDについてわかっている上で、ということですね。

 わかっていましたね。発達障害の子も知的障害の子も、同じクラスで勉強すると、彼は言っていました。日本では分けて教えていると伝えると、「なんで?」という感じでしたね。現地では、インクルーシブ教育が当たり前のようでした。

 もちろん、専門家もいるのですが、「英語でなく現地語でになるから、無理だよ」と言われて。ですから、現地で医師に診てもらったり、療育的なことをしたりということはなかったのですが、海外で暮らすこと自体が息子にとっては療育になっていたのかもしれません。

−− 具体的に、どのような部分に成長が見られましたか?

 まず、我慢できるようになりました。「ま、いっか」が、できるようになったのです。実はここが、幼い頃の一番の悩みでした。典型的な「床に寝転んで泣いている子」だったからです。妻はできるだけ息子のルーチンに沿うように努力していたのですが、スーパーでいつも買うお菓子が売り切れ、ということがあるわけです。そうなると癇癪を起こして泣き出してしまう。

 妻も私も、受け入れてはいたけれど、外でそれをされるとつらかったですね。

−− 「親がなんとかしろ」みたいな風に見られていると思ってしまいますよね。

 そうなんです。日本人はどうしても、社会に迷惑をかけたくないという思いが強いですから。電車に乗るときにはいつも、緊張がありました。癇癪を起こしたら嫌だな、とか。ですから当たり前に「ま、いっか」ができるようになったのは、大きかったです。

 あと、加配の先生がつかなくなったことも、本人にとって良かったかもしれないと思っています。本人が「特別扱いをされている」という意識をもたなくなったからです。加配がなくても、小学校はマンツーマンでみてもらえていたので、安心して勉強ができたのだと思います。

−−現地の日本人学校へは楽しく通っていたのですね。

 はい。途中からもう1人、1年生が入ってきたのですが、普通に仲良くしていました。人数が少ないので、上のお姉ちゃん、お兄ちゃんがかわいがってくれて。それもあって、本人は多分、すごく居心地がよかったのだと思います。

−− ルーチンの変更が苦手な子が、海外という全く別の環境で成長したというのは、ちょっと面白いお話ですね。

 特殊事例すぎて、あまり参考にならないかもしれませんが。息子の成長のタイミングと、環境の変化がいい意味でマッチしてくれたのだろう、という気はしています。海外で特別扱いされなかったのが、よかったのかもしれません。発達障害の子が、幼稚園でも学校でも社会でもみんなの中で暮らしていたので。

●戦争の危険で強制帰国。日本の学校へ

−− 日本に戻ってきたのは、いつですか?

 1年生の3学期です。現地の政治状況が悪化したため、家族だけ強制帰国となりました。

−− 急に日本の学校に入って大丈夫でしたか?

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続きは、2465文字あります。
  • ●妻が息子をそのまま受け入れたことが、成長のスタート

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