当事者家族インタビュー
ADHD、ASD、学習障害がある息子
「母親の育て方が悪い」と言われて(後半)
発達障害という言葉がまだ一般的ではなかった頃に子育てをしてきた東京近郊在住の女性は、「母親をやめた」といいます。ADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、学習障害があるという現在20代の息子さんは、中学生の時には、その才能を認められ「異才発掘プロジェクト」のメンバーに選ばれました。現在は西欧の大学で一人暮らしをしています。インタビューは前半、後半の2回に分けてお届けします。また小学校5年生で告知をした際の当時の記録を掲載します。(前半のインタビューはこちら)

「アーカイブ」では、発達障害当事者や当事者家族、その周りの人々へ向けた情報を蓄積していきます。専門家からの深く細かい情報、現場のリアルな情報だけでなく、当事者や当事者家族の体験を記事にすることで、なかなかアクセスできない、子育てや学校、受験、仕事などにまつわる、個人の経験をお届けします。
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本記事は、個人の体験談です。発達障害においては、たとえ同じ診断であっても、症状や困難は一人一人違います。また時期や地域によって、医療や教育、サポートの体制も大きく異なっています。
「異才発掘プロジェクト」のメンバーに選抜されて
−− 中学校はどのように選びましたか?
公立の中学に進学しました。実は、中学受験をして私立中学への進学を考えていました。鉄道関係の部活があるとか、のんびりした雰囲気の男子校とか、理系に力を入れている学校とか、そういう私立の学校のほうが合っているんじゃないかと思ったからです。そうしたら、サポートの先生から反対されたんですね。「私立では、条件に合わない子は退学させられるから」ということでした。
専門の先生がそう言うのであれば、そうなのだろうと思って、公立に行くことにしました。公立は義務教育ですから、やめさせられる心配だけはありません。
−− 中学1年生で、東京大学先端科学技術研究センター(先端研)のDO-IT(*1)の「ROCKET(ロケット)(*2)」のプロジェクトに参加されていますよね。先端研の中邑賢龍(なかむらけんりゅう)先生が主宰されていた「異才発掘プロジェクト」で、いわゆるギフテッドの子ども達を伸ばす教育を目的としていました。
息子は、小学校1年生のときには校長先生に「犯罪者になる」と言われ、小学校4年生のときには別室にばかり追いやられていました。でも私は、「息子はそのままでいい、息子の特性を理解し、共存できる社会になってほしい」と、ずっと思っていたんですね。ある日ふと、息子のような子どもの研究を、どこかの大学でしているのではないかと思い立ったんです。私が何を言っても、学校は信じてくれない。でも、大学の先生が何か言えば、信じてもらえるのではないかと思って。それから、大学などの研究機関を調べ始めました。そして東大の先端研で、「ROCKET」のプロジェクトが始まるということを知ったのです。
そのために、もう一度WISC(ウィスク *3)などの検査を受けました。6年生でDO-ITに所属し、中学1年生で選ばれて「ROCKET」に参加することになりました。DO-ITには、障害はあるけれど自分の好きなことを突き詰めているというタイプの子が多くいました。「ROCKET」のメンバーとして選ばれたことは、親子共に転機になったかもしれません。